コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ドンレのくすんだ瞳が輝いた。
枯れ枝のような手をリンの体に這わせ、くぼんだ頬を、若者らしい張りのある胸にすり寄せる。
いつまでも、女でありたいと、すがるドンレを目《ま》の当たりにして、リンはあきれ果てた。
自分の腕の中にある、やせ細った女は、まだ男を求めている。
年老いてしまえば……。誰しもこうなるのか。
呆れつつ、リンは朽ち果てた女に唇をかさねた。
目的からの愛撫。おざなりのそれにも、腕の中の女は、歓喜で身を震わす。
愛しげに投げかけてくるドンレの眼差しが、邪魔でならなかった。
暫く後、後宮は静かに幕切れを迎えた。
「さて、次の女官長は、皆様あれでご承知なされるな?」
年配の黒衣姿の男達が詰めている。
後宮の裏方を補佐する役目で置かれた宦官とは言うものの、実のところ、特に仕事らしい仕事はなく噂話に話を咲かしていればよかった。
だが、今回はそうは行かない。
古老の宦官がリンを見た。
「心配はいらない。ドンレ亡き後も、ちゃんと屋敷住まいできるように采配するからな」
裏方をまとめる女官長がみまかった。
予測されていたことだけに、後宮に混乱はみられなかった。
人一人消えようと、いくらでも変わりはいる――。
それが、宮殿というもの。
ただ、いかにも惜しいものをなくしたと、喪に服す苦痛からどう逃れようか、黒衣の男たちは、頭を悩ましているだけであった。
「申し訳ございません。私ひとりでは、どうしてよいものか。長様……」
うつむき、口を濁すリンに、皆同情のまなざしを送っている。
「リン、お前も、主人運がないな。グソン、ドンレと立て続けだ」
これでいい……。
(……グソン様!私は!)
リンは、こみ上げてくる涙をぐっとこらえた。