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図書館のテラス
夜の帳が降りる頃
太宰治は手摺りに身を乗り出し所在なげに夜空を仰いでいた
「お別れしたのはもっと前のことだったような気がするなぁ…」
独り言のような、あるいは誰かに聞かせるような場違いに明るい声
太宰の足先は新調されたばかりの革靴の踵をリズムを取るように石畳に擦りつけている
キュッキュッと乾いた音が静まり返った夜の空気に小さな波紋を広げた
「なんだ藪から棒に」
「また感傷に浸っとんやな」
隣で煙草に火をつけた坂口安吾が紫煙を吐き出しながら横目で太宰を見た
その少し後ろ、階段に腰を下ろしてカレーを食べているのは織田作之助、その隣には檀一雄がいる
「いや俺達が一度死んだときのこととかそれともここに来てから誰かが絶筆したときのことか…あるいはもっともっと昔何者でもなかった頃のことか」
「なんだか悲しい光を無理矢理胸の奥に閉じ込めて踵すり減らしてここまで走ってきた気がするんだ」
太宰の視線の先にはぼんやりと光る「透明な彗星」のような月があった
アルケミストの術によって呼び戻された体は確かに熱を持っている
けれどその真にあるのはかつての生で味わった「お別れ」の数々だ
「悲しい光…か」
「確かに太宰クンは特にそういうの溜め込みそうやからな…」
「でも太宰、正常か異常かなんて考える暇もないくらいに泥を跳ねて歩いてきたから今こうやって四人でいるんだろ」
「例えその靴がいつかまたボロボロになるとしてもさ」
檀の言葉に太宰は一瞬だけ泣きそうな顔で笑った
伝えたかった言葉はきっとあった
けれどそれは恐ろしくあまりにもありきたりな「ありがとう」な「さよなら」で
「そうだな…寂しくなんかなかった」
「ちゃんと寂しくなれたから」
太宰は顔を上げ力強く地面を蹴った
自分の中にまだ残っている「痛み」が忘れたって消えはしないことをその確かな振動で確かめるように
いろいろな方登場のボカロ「ray」イメージの小説です
お薦めの曲なので聞いたことない人是非
グサッとくるので
コメント
1件
こんなの見てしまったら聞くしかなくなるでしょう!!!絶対聞きにいってきます、本当に…ぶらいって豪快な人だらけなのに儚くて些細なことで割れてしまいそうで…それを再現できるのは本当に尊敬の遺です…!