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「…また行くのかい」
図書館の隅、高い書架に背を預けていた芥川龍之介が静かに声を漏らす
彼らにとって本の中へ潜るということは自らの魂の一部を削り取る作業に等しい
侵蝕者に抗う度かつて自分が生み出した言葉が、理想が濁った闇に塗り潰されていく
「悲しい光は封じ込めてきたはずなのにね」
芥川は自嘲気味に微笑み自分の胸元を軽く叩いた
そこには前世の最期やこの図書館で仲間を見送った際の色褪せない「痛み」が逃げ場もなく詰まっている
ふと視線を上げると扉の前に誰かいた
「今から潜書だぞ」
菊池寛だった
「わかっているよ寛」
「少しだけ考えていたんだ」
「僕達がこうして踵すり減らして歩き続けるのは何のためだろうかと」
「何のためか、なんて考える暇もねぇほど歩くのが大変なのはお互い様だろ」
快活な声が割り込む
直木さん、山本さんと久米だ
彼らの足取りには迷いがない
「あの痛みは忘れたって消えやしない」
「だったらそれを抱えたまま笑って行こう」
芥川は僅かに目を見開いた
彼らも同じ痛みを抱えている
ただそれは「影」として引きずるのではなく前に進むための「光」の対比として受け入れているのだ
芥川は深く息を吐き、封じ込めていた感情を心の奥へと押し込んだ
お別れしたのはもうずっと前のこと
けれどその別れから伸びた影が今彼らの進むべき道を長く長く前へと伸ばしていた
「行こう」
「透明な彗星を探しに」
芥川は一歩本の世界へと踏み出した
今日は皆既月食が見れるとかなんとか
急ぎで文字打ち込んだので誤字脱字あるかもです
申し訳ない