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厨二病の創破
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百はな🍑
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成瀬りん
312
かじかむ指の震えを止めることができない極寒。
息も睫毛も凍る夜。一寸先は猛吹雪、探索すらもままならない。腕の中の温もりは身じろぎひとつ満足に出来なくなってしまった。角灯はとっくに冷たくなって捨て置いてしまった。持ってくれば何か使い道でもあったかもしれない。後悔しても戻れる距離ではない。
冷たい藍の冬景色、 このまま2人凍るのならば、何を試したとて遅くない。
「ごめんよリー。少し寒くなる。」
「…何するつもり?」
閉じていた目を開いてリマイアの髪を撫でる。この旅路で随分と傷んでしまった。忘れたくないなぁ。君との思い出は随分甘くて温かい。でも、決断はいつだって残酷に、即決しないといけない。それが生死を別つのだから。 彼女を地面にそっと降ろし、詠唱を唱える。魔力が回復しているといいなあ。あぁ、どうも平気そうだ。
「ひ、ウィル、やめて。それじゃああなたが」
「目を閉じて、リー。危ないよ。『荒ぶ星雲、花の歌、愛しき我が守護者。』」
ごう、と音を立てて彼女が見えなくなる。心配していた一つの山を超えるところまでは吹雪を蹴散らして見ることが叶った。酷い怪我をしないといいけれど。
僕はと言えば 力を使い果たして背中から勢いよく地面に倒れ込む。うん、硬い地面よりはマシ。唯一ここでよかったと思えた。
恨んでくれるかなぁ、覚えていてくれるかなぁ。忘れては、くれないよなぁ。
爪先は痛みを超えて何も感じなくなった。短い期間だけでも彼女を独り占めすることができてよかった。ポカポカとした温かい気持ちさえもこの氷雪は容赦なく奪い去って行く。
どうか後ろは振り返らずに。
記憶の魔女、リマイア・ヴィネルータ。
忘却を禁じられた呪いの子。
茨の道で挫けることのないようただ、今だけは祝福あれ。
氷雪の国サルニアにて永久に我が精霊の導きを祈る。
コメント
1件
ああもう…冒頭から心臓ぎゅってなったよ……。 極寒の中で、ウィルが自分を犠牲にしてリマイアを守る決断をするところ、重くて美しすぎる。「忘れたくないなぁ」って髪撫でながら思うのが切なくて、読んでるこっちも息が詰まった。 記憶の魔女って設定もすごく気になるし、続きが気になって仕方ないよ……散策ステッポさんの言葉、ちゃんと受け取ったよ🌙