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「昨日、突然来たというのもあるし………昨日と同じ服を着ているのが、何か落ち着かないというか……。それに、元家族の事でモヤモヤしたまま、純さんと一緒にいるのが、心苦しいというか……」
恐らく、恵菜の本音は、元家族なのだろう。
せっかく互いの気持ちを通わせたのに、残念ではあるが、純は彼女の気持ちを汲む事にした。
「…………分かった。けど……恵菜の家まで送らせて欲しい」
「え? いいんですか?」
「当たり前だろ? 恵菜は俺にとって、誰よりも大切な女(ひと)だ。それに…………またマザコンの元ダンナが、恵菜の家の前で張っている可能性もある。俺はもう君を…………危険な目に遭わせたくない」
嘘偽りのない真剣な眼差しに、瞳を潤ませる恵菜。
「…………じゃあ……純さんのお言葉に……甘えさせてもらいますね」
恵菜は穏やかに笑みを見せると、ソファーから立ち上がり、着替えをするために寝室へ向かった。
身支度を整えた二人は、玄関へ足を向ける。
(名残り惜しいな……)
純は、小さな背中を見つめながら恵菜に近付き、背後から抱きしめた。
「恵菜……」
「じゅ…………純……さん……?」
恵菜が目を見張ると、純は廊下の壁に恵菜の肩を貼り付け、囲い込む。
「…………帰したくない……」
彼女の顔を掬い上げるように、艶めいた唇を塞ぐ純。
主導権を握るように、唇を重ねながら少しずつ顔の角度を変えていき、恵菜の顎に手を添えて上を向かせ、キスを交わし続けた。
「んうぅっ……」
零れる恵菜の吐息に色が滲み、細い指先は、おずおずと彼の袖を掴む。
たくましさを感じさせる腕の中で彼女の身体が脱力し、しなやかな筋肉質の身体に、しなだれ掛かった。
ひとしきり恵菜の唇の感触を堪能した純は、彼女の上唇と下唇を甘く食むと、ゆっくりと顔を離していく。
「ゴメン。何だか俺…………焦っちゃって、恵菜にカッコ悪い所ばかり見せてるな。そろそろ行こうか」
純は苦笑いを見せながら恵菜の手を取り、マンションを出た。