外に出ると、純の予想以上に雪が積もっていた。
「車で送る事も考えたけど、雪道で運転して事故に遭ったら大変だから、電車で恵菜の家まで送るよ」
「え……そんな…………わざわざ電車で……」
「恵菜を危険な目に遭わせたくないって、言っただろ?」
「…………本当にすみません。ありがとうございます」
純が穏やかに答えると、恵菜は申し訳なさそうに、頭を軽く下げた。
本当は、車で西国分寺まで送っても良かった。
だが車だと、雪道を運転する際、かなり神経を使うし、何よりも、恵菜と一緒にいられる時は、彼女に触れていたい気持ちが強い。
吉祥寺駅までの道を、純は恵菜の手をしっかりと繋ぎ、転ばないように小さな歩幅で歩いている。
駅に到着したのは、マンションを出発してから約二十分後。
中央線の下りホームで電車を待っている時も、電車に乗っていても、西国分寺に到着し、恵菜の自宅へ向かうまでも、純は恵菜の手を離さなかった。
「あの……そこの角を曲がったら──」
「恵菜の家だろ? 君がちゃんと家に入るのを見届けたら、俺は帰るから」
恵菜の言葉を退けるように、純は、すかさず言葉を繋げた。
「純さん……ありがとうございます……」
恵菜の歩調が、辿々しく角を曲がり、純も彼女の手を取ったまま、後をついていく。
「やだっ……!」
恵菜が声を上ずらせていると、彼女の家の前で、夫婦と思しき人たちが雪掻きをしている。
「お父さん! それにお母さんもっ……!」
彼女の声を聞いた夫婦が、こちらに気付くとニッコリと微笑み掛けてきた。
「おお、恵菜。お帰り。早かったな」
「恵菜、お帰りなさい」
恵菜の両親が、彼女の後ろにいる純に視線を投げ掛けると、彼は深々と一礼する。
怪訝な表情をされる、と考えていた純だったが、彼女の両親は、スコップを雪に刺した後、笑みを浮かべ、手招きをしてきた。
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