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あれから一週間。メリーティアはバシリー伯爵家を訪れていた。
今夜、ここで仮面舞踏会が開催されるのだ。
バシリー伯爵家では毎年仮面舞踏会を開いており、普段とは一風変わったパーティーが楽しめると貴族の間で人気を博していた。
しかしながら直々に招待された人物しか参加することができないことでも有名だ。譲り受けた招待状は無効にされるらしい。
そして今回はそこに皇帝が参加するという噂が流れており、余計に注目を集めていた。
メリーティアのもとに招待状が届いたのは、皇宮からタウンハウスに戻った翌日のことだ。ケイリクスからの指示で送られたものだとすぐにピンときた。この仮面舞踏会で会おう、ということだろう。
早くもケイリクスが撒いた餌に食いついたのだ。
あの日に粉をかけておいたのが功を奏した。
メリーティアの計画では、ふたたびあの離宮で過ごす必要がある。
だが単身でいきなり皇宮に行けば、ケイリクスは喜んで受け入れるだろうが、モナが邪魔をしない保証がなかった。一度タウンハウスに戻ったのは悪手だったと後悔していたところだったため、渡りに船だ。このチャンスを有効に使わなくてはもったいない。
それにケイリクスとともに入宮したほうが安全だ。
皇宮はケイリクスの天下ではあるが、前回メリーティアに毒入りの茶を渡したメイドのように、どこにモナの手先が潜んでいるかわからない。あの閉ざされた離宮の専属メイドすら手懐けたのだ。用心して損はなかった。
(早いところ、仮面舞踏会の参加者の中から皇帝を見つけださなくっちゃ)
メリーティアはそう意気込むと、馬車から降りてバシリー伯爵邸を見据えた。
続々と会場に入っていく参加者たちは、皆一様に仮面で顔を隠している。普段の舞踏会と違うのはそれだけではない。男性は少し気楽な服装で、女性は露出が極端に多いドレスを着ている人が多かった。
全員ひとりなのは、参加資格があるのが招待された本人だけだからだ。パーティーには珍しく、なぜかペアの帯同が許されていなかった。
どんなパーティーなのかは参加者だけの秘密らしく、内容に関しての噂はほとんど聞かない。
メリーティアも人々にならって入口で侍従に招待状を見せ、会場へと足を踏み入れた。
「……まあ」
灯りがわざと絞られているようで、人の顔の判別も難しいほどホール内は薄暗い。
会場となっている小規模なホール内は、ところどころに天井から長いカーテンがかけられていた。舞踏会と銘打っているのに、ソファが堂々といくつも置かれていたりする。
その妖しげな雰囲気は異様としか言いようがない。
あたりには嗅いだことのないいい香りが漂っており、メリーティアはつい深く息を吸い込んだ。
「……何の香りなのかしら?」
会場中を巡るように歩いていると、メリーティアを見た男性たちがざわめく。
メリーティアもドレスコードである仮面をつけているため、顔はわからないはずだ。精緻な意匠の黒い仮面は、顔の半分を隠している。
男性たちがこぞって興味を示すのは、メリーティアの着ているドレスのせいだろう。
胸を強調したデザインは、ただでさえ豊満な双丘をさらに大きく見せていた。以前ヨハンセンの生誕パーティーに着ていたのと似たマーメイドラインのドレスだが、裾には腿の半ばまで深くスリットが入っている。スタイルの良さを最大限に際立てていた。
贔屓にしている衣装室で仮面舞踏会用のドレスを注文したらこれが届いたのだ。
少し派手すぎでは、と心配したのも杞憂だと思えるほど、ほかの女性たちのドレスのほうがなかなかに際どいデザインだった。
声をかけてくる男性たちをあしらいながら、給仕からシャンパンを受け取る。
「ん……甘くて飲みやすいけれど、すごく度数が強いみたいだわ……」
喉が渇いていたから一度で半分も飲んでしまった。
酒に弱いほうではないと自分では思っていたが、心なしかもう顔が熱くなっている気がする。頭もくらくらした。早くケイリクスを捜さなければならないのに、足がふらついて上手く歩けない。目を瞑ると世界が回っているような感覚だった。
壁にもたれて休んでいると突然影がかかったことに気づいて、億劫ながらも瞼を開ける。
鬼霧宗作
70
もあ
44
#復讐
りう。
45
さぶれ-SABURE-
1,239
「先約がいるの。ほかを当たって――」
「メリーティア」
聞き馴染みのある声が聞こえて、メリーティアは仮面の下で目を見開いた。