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第十五章 二つの目覚め
第十一話 交わらぬ正義 後編
「ーーやれ」
その言葉と同時に。
森の奥でいくつもの魔力の光が灯った。
次の瞬間。
炎。
水流。
鋭い風。
地面を抉る土。
様々な魔法が5人へ向かって放たれる。
「散開しろ!!」
ハヤトの声が響いた。
全員が咄嗟に馬を引き、攻撃を回避する。
ドォンッ!!
炎が地面で爆ぜる。
熱風が頬を焼く。
続けて鋭い風の刃が木々を切り裂いた。
渦を巻く水流が枝を吹き飛ばし、足元の土が大きく抉れる。
「っ……!」
ダイチはすぐにジントの前へ出た。
迫る攻撃を、雷と水を纏わせた拳で受け止める。
衝撃。
腕が痺れる。
「下がっとれジント!!」
「でも……!」
「ええから!!」
ダイチの声には余裕がなかった。
相手は魔物じゃない。
だからこそ。
全力で叩き潰すことが出来ない。
例え命を狙われていても。
その迷いを白装束達は逃さなかった。
「月蝕の子を捕らえろ」
淡々とした声。
狙いは最初から変わらない。
ジントだけ。
「囲まれるな!!」
ハヤトが前へ出る。
大剣が黄金の光を纏う。
迫る炎を斬り払い、そのまま一人の白装束へ踏み込む。
剣を振り抜く。
だが刃ではなく、剣の腹。
男を吹き飛ばすだけに留めた。
その瞬間左右から魔法が迫る。
「くっ……!」
大剣で受け止める。
腕へ重い衝撃が走った。
相手は本気で攻撃を仕掛けている。
しかし殺さないように戦う。
それだけで、動きが大きく制限される。
一方、ジュウタロウも苦戦していた。
三人。
連携された攻撃。
炎が視界を塞ぎ、風が動きを乱し、
その隙へ剣の刃が迫る。
ジュウタロウは細剣で受け流す。
一歩踏み込む。
「遅い」
柄で腕を打ち、足を払う。
一人が崩れる。
だがその直後。
背後から魔法が迫った。
咄嗟に身体を捻る。
マントの端が焼け落ちる。
「…………」
完全に殺すつもりだ。
その事実が、全員の表情を険しくさせる。
そして魔法が飛び交う轟音の中、シュンタのリュートが鳴り響く。
鋭い音色。
白装束達の動きが乱れる。
「今や!!」
炎が渦を巻き、前方の数人を吹き飛ばした。
だが次の瞬間。
横から風の刃。
「シュンタ!!」
ダイチの叫び。
避けきれない。
肩を掠め、血が滲む。
「っ……!大丈夫や!」
シュンタは痛みを堪える。
「それより前見ぃ!!」
ジントは、ただその光景を見ているしかなかった。
動けない。
身体はまだ重い。
昨夜、限界を超えて瘴気を受け入れた反動。
そして、相手は人間。
自分の力ではどうすることも出来ない。
「………っ」
目の前で 傷付いていく仲間達。
また、自分のせいで……。
その時だった。
ふとジントは森の奥へ目を向けた。
木々の隙間に、一人だけ動かない人影がある。
他の者達とは違う。
前へ出ることもなく、ただ静かにこちらを見つめている。
その手には、一張の弓。
ゆっくりと、弦が引き絞られていく。
ーーキリ……
微かな音。
その瞬間ジントの瞳が、その矢先を捉えた。
黒い。
矢の先端が、不自然なほど黒く濁っている。
胸の奥がぞくりと冷えた。
「……毒……」
掠れた声が漏れる。
直感だった。
あれを受けてはいけない。
そして弓を構えた男の視線が、真っ直ぐジントへ向いた。
狙いは。
自分。
「……っ」
身体が凍りついたように動かない。
逃げなければ。
分かっている。
なのに、足が動かない。
弦がさらに引き絞られる。
周囲の音が、一瞬だけ遠ざかった。
風の音も。
馬の嘶きも。
仲間達の声さえも。
ただ黒い矢先だけが、異様なほど鮮明に見えた。
そして弦から、指が離れる。
——ヒュッ!!
一直線。
夕暮れの空気を切り裂きながら、黒い矢先が、真っ直ぐ胸元へ向かってくる。
「ジントォ!!」
ダイチの叫び声。
そして視界の端から、青い影が飛び込んできた。
迷うことなく。
一瞬の躊躇もなく。
ただ、ジントを守るためだけに。
「っ……!」
強く肩をぶつけられ、ジントの身体が後ろへ弾き飛ばされた。
「ダイチ!?」
地面に倒れたまま顔を上げる。
その直後。
——ドスッ。
鈍い音が、鼓膜に響いた。
「ぁ……っ……!!」
ダイチの身体が大きく震える。
動きが止まる。
背中へ、黒く濁った矢が深々と突き刺さっていた。
ダイチは何かを言おうと口を開く。
けれど声にならない。
膝がゆっくりと崩れていく。
「……ダイチ……?」
ジントの声が震える。
目の前で、ダイチの身体が傾いていく。
ジントは咄嗟に駆け寄った。
倒れ込む身体を、両腕で受け止める。
「ダイチーーっ!!」
ジントの悲鳴が、夕暮れの森へ響き渡った。
コメント
1件
うわあ……もう、胸が締め付けられる展開でしたね。ダイチがジントを守るために飛び込んだ瞬間、本当に声が出そうになりました。「♡♡♡ないように戦う」という制約の中での連戦、そのジレンマが痛いほど伝わってきて……。それに毒矢の伏線、あの黒い濁りを見た時のジントの直感が的確だっただけに、なおさら辛い。でも、ダイチの「下がっとれジント!!」って台詞に、彼の覚悟が全部詰まってました。comiさん、この重みのある展開、ちゃんと受け止めましたよ。続きが気になって仕方ないです……。
𝕔𝕠𝕔𝕠
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ぷりんねこ
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comi
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はる☻
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