次の週、涼平は昼休みにコンビニの弁当を食べながら、加納や佐野と談笑をしていた。
加納は妻の早紀が作った美味しそうな弁当を食べながら涼平に言った。
「詩帆ちゃんとは、その後上手くいっているのか?」
「はい。詩帆はもうすぐフリースクールの仕事が始まるのでその準備で忙しそうです」
それを聞いた佐野がすぐに反応する。
「涼平さん今『詩帆』って呼び捨てにしましたね」
「そういやそうだな。お前らとうとう…」
加納もニヤニヤしながら涼平を茶化す。
「違いますよ。嫌だなあこれだから品のない人たちは」
「えっ? まだなんっすか?」
「おいおい涼平ちゃん、今回は随分紳士的だねー」
「ほんとっすよ。昔っから涼平さんと言えば獲物を見つけたらジャガーのような素早さでーって有名でしたからねー」
二人の言葉を聞いて涼平は「いい加減にして下さいよー」と苦笑いをする。
そして続けた。
「実は下田の海に詩帆を連れて行きたいんですが、泊まり以外で行く方法ってないですかね?」
「なんで下田なんだ?」
「詩帆が好きな海の色が下田の海なんです」
「確かに下田はエメラルドグリーンの海だもんなぁ。だったら朝早く出れば余裕で日帰りで行けるだろう」
「いや、下田の海を見たら詩帆は絶対絵が描きたくなると思うんですよ。その為には絵を描く時間をとってやらないとなんです。でもそれだと泊まりになっちゃうしなぁ…」
涼平が悩んでいると佐野が言った。
「泊まりじゃダメなんっすか? 涼平さんチャンスじゃないっすか!」
「そうだよ。お前ら真面目に付き合ってるんだろう? だったら洒落たホテルでもとって一泊で行って来いよ
「いや、まだその時期じゃないっす」
それを聞いた加納は、泊りがけでは行けない理由が何かあるのだなと察した。
そこで佐野が言った。
「ホテルでエッチがダメなら、アレはどうっすか? アレ!」
「アレってなんだよ」
「アレっすよ! 俺達最近全然行ってないっすけどーキャンプ! 昔はみんなでよく行ったじゃないっすかー」
佐野の提案を聞いて涼平の瞳が輝き出す。
「佐野! お前たまにはいい事言うじゃないか! それだっそれ!」
涼平は佐野の頭をクシャクシャッと撫で回しながら、早速パソコンでキャンプ場を調べ始めた。
そこでさらに佐野が言った。
「テントの中でのエッチは燃えますからねー。涼平さんガンバですっ!」
それを聞いた加納が腹を抱えて大笑いした。
涼平は佐野の頭を軽く叩いてから、
「オマエ、動機が不純過ぎるんだよ、動機が!」
そう言いながら涼平も加納と一緒に大笑いをした。
詩帆はその日仕事が休みだったので、家事を終えてからフリースクールでの授業の下準備をしていた。
いよいよ来週の月曜日が初授業だ。
詩帆は少し緊張していたがその日を楽しみにしていた。
美術の授業は、デッサンや絵画、立体工作などの実技以外に、パソコンを使ったイラスト作成や画像編集、写真等から自分がやってみたいものを選択するという方式にしようと思っていた。
限られた時間の中での濃い内容の授業にするには、これが一番手っ取り早い気がする。
基礎的な部分までなら詩帆でも充分教えられるのでなんとかなるだろう。
それ以外にも、時には全員で楽しめる課外授業も取り入れようと思っていた。
それは例えば海でのスケッチや美術館での絵画鑑賞等だ。
もし詩帆の技術が及ばなくても、生徒達の中に詳しい子がいるかもしれない。
特にパソコンについては期待出来そうだ。
もし詳しい子がいれば、その子に指導をお願いするのもいいかもしれない。
そうやって生徒一人一人の自主性や個性を引き出していけたらと思った。
大体の構想がまとまった所で時計を見ると、もう夕方の五時を過ぎていた。
詩帆が慌ててベランダの洗濯物を取り込んでいると携帯が鳴った。
携帯には、涼平からのメッセージが届いていた。
【今日は早く帰れそうだから菊田さんの店で一緒に夕飯を食べない?】
涼平は今日詩帆が休日なのを知っていたので誘ってくれたようだ。
詩帆はそんな涼平の気遣いが嬉しくて喜んで行く事にする。
そして詩帆は今計画している授業の概要を、涼平に聞いてもらって意見を聞きたいと思っていた。
もしかしたら涼平から色々なアドバイスが貰えるかもしれない。
詩帆は洗濯物を片付けると、急いで出かける準備を始めた。
東の空には月が昇ってきた。
深まりゆく秋の夜空には、黄金色に輝く明るい満月がぽっかりと浮かんでいた。
コメント
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涼平さんと詩帆ちゃん、お互いを思いやり少し気遣いながらとてもいい距離でお付き合いできて羨ましい😊💞✨ お互い仕事にも張り合いが出て時々デートで意見交換もして最高じゃない👏❣️ それと下田の海の下でキャンプ🏕️もナイスアイディア💡👍 Hな妄想も飛び交ってたけどどうなりますかねぇ〜🤭💘⁉️