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「ここがラカンス……?」

あれから一週間経った日に私たちは発ち、五日かけてラカンスまでやってきた。

彼が驚嘆したように言う。

「はい、自然が豊かで素敵なところでしょう?」

私は馬車から降りながら彼ににっこりと笑った。

「いやあ、久しぶりに来たね」

兄がしみじみと言う。

「そうですね。七年ぶりですものね」

私は兄の言葉に頷いた。

そう、兄と私は公爵邸に戻った後もこの別荘に一度も行かなかったのである。何故なら兄の仕事が忙しかったからだ。兄は公爵である為、いつも多忙だった。しかし、今年は兄の秘書であるイディアスさんが、たまには兄に休んでほしいからと仕事を兄の代わりに引き受けてくれることになったのだ。何てお優しいのだろう。全く頭が上がらない。

「イディアスには気の毒だけど、この際しっかり休もうかな。さて、こうしていても仕方ないし、入ろうか」

私と彼は頷き、私たち三人は中に入った。すると、中でここの別荘専用の使用人たちが迎え入れてくれた。

その日は、私たちはそれぞれの自室でゆったりと過ごした。

そして、ここに来て一週間が経った。

夜、私はナージリス語の勉強をしていた。

と、コンコン、と扉がノックされる。

「どうぞ」

開いた扉から覗いたのは……。

「あら、ルウィルク様。いかがなさいましたの?」

そう、彼だった。

彼は不機嫌そうに眉根を寄せていた。

「眠れないから、お前の様子でも見に行こうかと思って」

「まあ、そうでしたの。そういうことなら入ってくださいまし」

私は彼に微笑んだ。

すると彼は少し申し分なさそうな顔をして、小さく「邪魔する」と言う。

彼は中に入り、ナージリス語の本を広げた私の勉強机に歩み寄った。

「これは……?」

「ナージリス語です」

私も勉強机に近寄る。

「ナージリスって……隣国の?」

「はい」

私は笑顔で頷いた。

「いつ勉強し始めたんだ?」

「一ヶ月前です」

私の答えに、彼は首を傾げる。

「これは全部ナージリス語で書かれた本だぞ?読めるのか?」

彼の言葉に私も首を傾げた。

「はい?一ヶ月もあれば、一つの国の言語くらい読めるし、書けるようにもなりましょう?」

え、それが普通じゃ?

私の言葉に、彼は呆気にとられたような表情をする。

「……………………………………は?」

「え?」

私たちは二人とも目を見開いて固まった。

と、私は欠伸をする。

なんだか眠たくなってきたな。

私は目をこすりながら彼に言う。

「ごめんなさい、もう寝てもいいですか?」

「あ、ああ、全然いいが……」

「ありがとうございます」

私はベッドに歩み寄り、ベッドに入った。

ふかふかのベッドがさらに眠気を誘う。

「おやすみなさい」

私はすぐ隣にいる彼に微笑んだ。

「ああ、おやすみ」

彼はそう言い、やわらかい表情を浮かべる。それはいつもの無表情ではなかった。

温かく私を包み込んでくれるような……、そんな表情。

私は嬉しく思いながら眠りに落ちた。

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