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ガッシャアアアンと何かが砕ける音。キスミさんはそのムチを暴れさせて目の前に広がっていた見えない壁を粉々に砕いてみせた。
「なに⁉︎ 今の音は何なのっ」
「分からん! 奴がなんかしたのか⁉︎」
あいつらには見えていないんだ。あの鞭の動きが。ここで見えていたのはキスミさんだけだろう。僕にも何も見えなかったんだから。
「脆いな。どれほどのものかと思って力を込めすぎた」
キスミさんが呟きもう一振りすると、さっきからずっとうるさい女の人が血飛沫になって消えてしまった。
「なっ、どう言うことだ⁉︎」
「おい」
女の人の隣にいたおじさんは、後ろからのキスミさんの拳で殴られて弾ける。
いつの間に移動したのか、全く分からない。
次の瞬間には巨大な焼けた炭のようなハンマーで何人かをまとめて平たくしてしまう。凹んだ床に潰れて焼けたハンバーグが残る。
大きな鎌が部屋の壁ごと柱ごと両断する。その軌道上にいた者たちはいくつもの肉片となって吹き飛ばされた。
包丁が生きたままに輪切りにした。その断面は血を撒き散らす事なく、プルプルして保たれている。「なぜ……」と呟く声がしたあたり少しの間意識が残っていたようだ。
弓が貫くと痺れて身体の色を緑や紫にして血の泡を吹かせる。気づけば全員が撃ち抜かれて身体を震わせている。
双剣が細切れにする。確かに斬られて生きているはずなどないのに人の形を保ったままに動かしたところから崩れていくから、動かないように必死になっている。結局はこぼれた端からどんどんとバラけてしまったけど。
扇を振ればまとめて壁に叩きつけられ、次第に強くなっていく圧力に抗おうとするものの、やはり潰れたトマトになってしまう。
杖からは迸る奔流があたりを焦げ付かせた。それは火なのか雷なのか判断のつかないものだったけど、この部屋の汚物をまとめて消し炭にしてしまった。
そして今真っ黒な片刃の剣を持って最後の1人を串刺しにした。
「ごぼっ……きさ、ま……転移、しゃか……」
「俺はこの世界の生まれだ。貴様らの先祖と一緒にするな」
キスミさんはそう言って剣を引き抜く。
「お前で終わりだ。言いたいことでもあるか?」
最後の1人。これで終われる。
「──お前はとんでもないな。だがこの呪いの装置はもう止まらない。お前にも止められない。みんな死ねばいい」
奴が、どんな道理でそんなことを口にできたのか。権力を傘に悪逆非道の限りを尽くした貴族たちの怨嗟の声を残し、男は死んだ。