はじまり
キュルキュルと、真夜中のアスファルトを激しく摩耗するタイヤ。
対向車のライトに映える大量の灰色の煙を吐き出し。
片側二車線の道路を右へ左へと突っ走る。
そんな危険な自動車が一台あった。
白線もお構いなく走るその車は、ついに車体が大幅にひしゃげてしまった。
対向車線を走る普通自動車との正面衝突だ。
――――
テレビではちょっとしたトレンドだ。
凄惨な酔っ払い運転による交通事故だった。
片方の運転手は即死。
もう片方は俺の妹だ。
妹は軽傷だった。
妹はその後、運転手の遺体をガードレールから投げ落として、飲酒運転や死体遺棄などのてんこ盛りの罪で指名手配された。まもなく、無残に首を吊った状態で発見される。
だが、妹は酒は飲まない。
いや、まったく飲めないのだ。
誰かに無理やり飲まされたのだろうと俺は思った。
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