デリケートなガラス細工に触れるように、恵菜の頬に触れ続けている純。
彼女と初めて出会った昨年のクリスマスから、あと少しで三ヶ月になろうとしている。
彼にとって、緊張と、胸の奥が摘まれる気持ちになりつつも、充実していた約三ヶ月だった。
あの日、立川の駅前で恵菜とぶつかっていなかったら、『本気の恋愛がしたい』気持ちを隠し続けたまま、女遊びを繰り返していたかもしれない。
(こんな俺にも…………いたんだな……。俺が本気で好きになり、本気で俺を好きになってくれた女が……)
目の前で頬を赤らめて俯いている彼女を、彼は温和な眼差しを注いだ。
「恵菜」
純は繊麗な両肩に手を添える。
「改めて言わせてもらう。俺は…………恵菜の事が好きだ」
異国情緒溢れる彼女の面立ちが、ぎこちなく純を見上げた。
涼しげな瞳を潤ませながら、純からの言葉を待っている。
「恵菜。俺の彼女に…………なって欲しい」
低く柔らかな声音で、純は恵菜に想いを伝えると、長い指先が滑らかな頬に触れ、そっと撫でた。
「純さ……ん……」
美麗な顔に浮かぶ小さな花弁が、小さく開き、彼の名を呟く。
「私も…………純さんが……大好き…………です……」
「恵菜……」
「私の気持ち…………ようやく真っ新になって…………これで……純さんと真っ直ぐに向き合える。それが…………すごく嬉しい……です……」
恵菜は照れているのか、はにかみながら微笑んだ。
「純さん」
仄かに純が映り込んでいる、艶やかに濡れる瞳。
──恵菜の瞳は俺しか映らない、俺だけのもの。
恵菜に視線を絡ませながら、純の唇は微かに緩んだ。
「私…………純さんの彼女に……なっても…………いいですか……?」
「いいに決まってるだろ?」
控えめな恵菜の告白に、純は白い歯をチラリと覗かせた。







