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彼は、誰よりも何よりも愛おしい女を見下ろした。
「やっと出会えた……」
純は、恵菜の身体をフワリと抱き寄せ、柔らかな髪をそっと撫でている。
「俺が本気で向き合いたい…………恋をしたい女性……」
波を打つような髪に触れていた彼の手が、滑るように色白の頬を包んだ。
「君から見たら、俺は…………女にだらしがなくて、遊んでいて、軽薄で…………どうしようもない男に映っているかもしれない。でも……」
純の胸に顔を埋めていた恵菜は、辿々しく顔を見上げる。
「君が笑顔を失っていた分…………俺が君を……たくさん笑顔にさせるから……」
穏やかな声音に安心したのか、エキゾチックな彼女の瞳から、静かに雫が流れ落ち、痕跡を残しながら頬を伝った。
「君が愛情を注がれなかった分…………俺が……君を…………嫌というほど……愛するから……」
筋張った指先で、涼しげな目元に溜まっている涙を、そっと掬う。
濡れて揺らぐ瞳に視線を絡められ、彼を捉えて離そうとしない。
そんな恵菜に愛おしさが震えた純は、堪らず華奢な身体を掻き抱いた。
純に対して誠実に向き合ってくれたのは、恵菜だけ。
彼女は彼にとって、人生を賭けて守りたいと思える、唯一の女性だから。
こんなセリフを言ったら、キザな男と思われるだろう。
だが、そんな事は関係ない。
純の、今の正直な気持ちなのだから。
「俺と…………恋を始めよう」
胸に秘めていた全ての想いを告白すると、恵菜は、蕾が綻ぶような微笑みを、ゆっくりと開花させていった。
「私の中では…………昨年のクリスマスから……恋が始まってましたけど?」
「ああ、俺も…………あの日から始まってたな。けど…………」
純は抱きしめていた腕を緩め、恵菜の額に唇を落とす。
「俺と恵菜が、正式に恋人同士になった今日から…………改めて……二人で恋を始めよう」
穏やかに注いでいた純の眼差しが、真剣なものに変わり、恵菜を貫いた。
「今日は…………恵菜を帰さない……」