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海洋高校−物語は波のように−

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海洋高校−物語は波のように−

5 - 第2話「海藻ごはん、食べられない」

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2025年07月29日

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第2話「海藻ごはん、食べられない」
登場人物:ミル=トセリ(熱属性・草食系・1年)




 ミル=トセリは、海藻を残した。

 3日連続、潮属寮の食堂に顔を出しては、緑色の皿を前に固まっている。


 彼の髪は焦げたような赤茶で、後頭部だけ波打つように跳ねている。

 肌は日焼けした砂のように濃く、制服の胸元は熱属性の赤い三本線。

 でも目元だけは、いつも眠たそうに濁っていた。




 ソルソ社会では、食事と感情が密接に結びついている。

 ミルは草食系だから、本来は「海藻食」が基本。

 栄養バランスも、共鳴波も、感情安定も、すべては海藻由来の波に最適化されている。


 だけど最近、海藻を噛んだ瞬間に「海の音」が耳の奥でねじれる。

 波が逆流するみたいに、体がざわつく。

 それが怖くて、ミルは食べるのをやめた。




 「食べられないって、ただの変質の前兆でしょ?」


 そう言ったのは、同じ熱属性で波属のナギ。

 強い波をまとっていて、食べた直後は発光するほどの活性タイプ。


 「お前、変わる準備できてんじゃん。ラッキーじゃね?」

 「……ラッキーとか、ないから」

 「なんで?だって“変質”って、進化だろ」


 ミルは言い返さなかった。

 変質が進化? そうかもしれない。でも、それって**“誰かが決めた波”に近づくだけじゃないか?**




 数日後、彼はこっそり潮食堂の裏口に向かった。

 理由はわからないけど、“違う匂いがする”日だった。


 出迎えたのは、やさしい顔立ちの調理スタッフ──ククラ=モイ先生だった。

 むっちりとした肌に、海藻柄のエプロン。

 背中には感情によって色の変わる“潮殻”があり、今日は淡い金色をしていた。


 「海藻が、食べられないのね」

 ミルは、驚かなかった。なんとなく、バレてる気がしてた。


 「……ソルソの波が、変な方向に回る」

 「いいのよ。波なんて、毎日変わるもの。

  だって、感情って海みたいでしょ?」




 その日の昼、特別に出されたのは、“火の海藻スープ”。

 海藻を焼き、干してから、わずかに熱属性の貝殻出汁で溶かしたもの。

 見た目は地味。でも、飲むと体の奥があたたかくなった。


 「これは、焦がした波。あなたの今の波に、似てるから」




 食べ終えたあと、ミルはほんの少しだけ、手帳を開いた。

 そこに記された「今日の波」は、線が揺れていたけれど、

 それでも確かに、“彼のもの”だった。




 変わることは、進むことじゃなくてもいい。

 ただ、「食べられなかったものが、食べられるようになる」

 それだけでも、きっと、十分な“変質”だ。



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