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青い子
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第一話:天才(17歳)部長の平穏なる胃痛
「——神崎(かんざき)部長。今期のライバル他社とのコンペ、絶対に勝ち取ってね。もし負けたら……君の席(いのち)、なくなっちゃうから」
「ふふ、お安い御用です、黒岩(くろいわ)社長。我が営業部にお任せを」
全面ガラス張りのスタイリッシュな社長室。
高級なデスクに頬杖をつき、アイドル級に可愛い笑顔を浮かべる黒岩社長に対し、私——神崎は完璧なビジネススマイルで返した。
二十代後半の「若き天才エリート部長」として社内で恐れられる私だが、内情は違う。
実年齢十七歳。某組織から送り込まれたスパイ。
そして何より——戦闘力はゴミ以下、ただの非力な女子高生である。
(ゲドー―――ッ!!! 死ぬ死ぬ死ぬ! 今『席』って書いて『いのち』ってルビ振ってたよね!? 笑顔が逆にめちゃくちゃ怖いよおぉぉ!!)
背中に冷や汗をだくだくと流しながら、私はスマートに一礼して社長室を退室した。
廊下に出た瞬間、胃を抑えて壁に崩れ落ちる。
「……大丈夫ですか、部長」
すかさず私を支えたのは、クール系美人秘書のさとこ。
その正体は、私を影から守る本物の凄腕くノ一である。もちろん、彼女も私の正体が十七歳のザコだとは知らない。「冷酷で完璧なボス」だと思い込んでいる。
「ふん、ネズミの分際で私にプレッシャーを与えようなどと、片腹痛いよ、さとこ」
「流すが如きハッタリ……流石です、部長」
(違うの、ただの胃痙攣なの!! 早くおにぎり食べさせて!!)
私の頭の中は、午前中の緊張を癒やすためのランチのことで一杯だった。今日のお弁当は、さとこが作ってくれた特大の鮭おにぎりなのだ。
だが、私たちの平穏(?)なオフィスライフは、唐突に終わりを告げる。
「キシャアアアアアアッ!!」
突如、営業部のフロアに耳を突き刺すような機械音が響いた。
見れば、つい五ヶ月前に中途採用で入ってきた大人しい女性社員の目が、怪しく赤く発光している。彼女のスーツの袖口から、ガシャガシャと金属音を立ててハイテクなクナイが飛び出してきた。
「な、何ごと!?」
「部長、下がって! あいつ、ライバル企業が送り込んだ『忍者ロボット(にんころ)』です! 五ヶ月間も一般社員に擬態して潜入していたようですね!」
(五ヶ月間も!? 全然気づかなかった!っていうかロボット!? 科学の力強すぎない!?)
パニックになる私をよそに、忍者ロボはデスクを真っ二つに叩き斬りながら、こちらへ突進してくる。その刃が私の首筋に迫る——。
「ふん……五ヶ月も我が社にネズミが潜んでいたとはね。……さとこ、片付けなさい」
私は引きつる顔を必死に大人の余裕で隠し、さも「最初から気づいていた」風のハッタリをかました。
「御意!」
さとこが電光石火の速さで前に躍り出る。
オフィスのど真ん中で、「本物の美少女忍術 vs 最新鋭忍者ロボ」のハチャメチャな大バトルが勃発した。クナイと超振動ブレードが火花を散らし、コピー機が爆発する。
私はマッハでデスクの下に滑り込み、頭を抱えてガタガタと震えだした。
(ひえええええ! オフィスがめちゃくちゃだよお! っていうか、あいつ五ヶ月間、私がカツ丼食べてるのを隣でじっと見守ってくれてたじゃん! ロボットだったの!? 悲しいし怖いよおぉぉ!!)
机の下で涙目になりながら、私は自分の胃痛とおにぎりの無事を祈るしかなかった。
こうして、実年齢十七歳の弱小スパイ部長と、可愛い最強殺し屋社長、そして美人くノ一秘書の、命(と胃袋)をかけたキャットファイトな日常が本格的に幕を開けたのである。
(続く……?)
コメント
1件
わかるわかる、胃が痛くなる気持ちめっちゃ共感したよ…!笑 っていうか17歳で部長って設定、既に頭おかしくて好き🤍 黒岩社長の「席(いのち)」ルビ、あれだけで笑いと恐怖が同時に来るやつだった😂 さとことのやり取りもナチュラルにズレてて可愛いし、おにぎりに執着する神崎さんが最高すぎる。 続きめっちゃ気になるよ〜!読ませてくれてありがとう🥀