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煌びやかな歌舞伎町のネオンに、瑠衣は思わず手で顔を翳してしまう。
既に日は跨ぎ、深夜の時間帯でも多くの人が行き交い、うねり蠢く、眠らない街、新宿。
まさか、侑の自宅が新宿まで徒歩圏内だったとは、瑠衣は思いもしなかった。
「さて、今の時間だと、お前の物が買える店っていったら、ここしかないんだが」
「いえ、助かります。ありがとうございます」
二人が来たのは、ペンギンのキャラで馴染み深いディスカウントストア。
店内には、あの有名なお店のテーマソングが流れているが、今は物悲しく瑠衣の耳朶に響く。
衣料品のフロアに向かい、靴下と下着、部屋着とパジャマをそれぞれ二セット、シンプルなデザインのVネックニットの白と黒、白いフード付きのショートコート、有名デニムブランドの黒いスキニーパンツとスキニーデニムが、破格の値段で販売されていたので購入、もとい買ってもらった。
「…………お前、靴は今履いているパンプスしかないんだろ? 靴も買った方がいいんじゃないか?」
瑠衣が買った物を見て、侑がシューズコーナーへと足を向ける。
何足か履いてみて、履きやすかったスニーカーを二足、侑に買ってもらった。
(とりあえず、間に合わせでも着替えが確保できて良かった……)
瑠衣は心底ホッとしたのか、ほんの少しだけ笑みを滲ませた。
「…………随分と安く上がったな」
東新宿の自宅に戻り、二人の両手がいっぱいになるほどの荷物をリビングに置く。
レシートを見ながら侑がボソっと言葉を零すと、虚ろな表情の瑠衣が、ポツリと答えた。
「いや、これが普通じゃないかと……思いま……す」
心ここにあらず、の瑠衣は、伏し目がちに床をじっと見つめたままだ。
「…………そうか。なら風呂に入ってきたらいい。着替えがあるなら、心置きなく風呂に入れるだろ?」
「では、お先に…………頂きます」
瑠衣は下ろしたての着替え一式を持って、バスルームに消えた。