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「───ごめんなさい。」
目頭から床に落ちるのは熱くてしょっぱい水。目の前がぼやけて、何も見えない。沈黙が続く部屋では、床にポツポツと落ちる涙の音だけがはっきりと聞こえて。
深く礼をし、頭はそのまま上げることはしなかった。上げるなんて、滅相な。相手にしてしまったことを許せなんて、今更都合が良すぎるのに。
「…俺も、ごめん。」
謝るべきでない相手からの謝罪は、こうも罪悪感に蝕まれてしまうのだと、初めて痛感した。
僕は勢いのまま顔をあげて相手を見るも、時が止まったように感じた。
なぜ相手は笑いながら泣いている?なぜ相手は謝りながら笑っている?なぜ相手は謝った?
彼の太陽のような色をした瞳から溢れているのは涙だ。ぼくと何ら変わりのない涙。
「え、え…な、なん…え?」
僕が泣きながら戸惑えば、相手は吹き出した。
けれど、彼は僕と向き合って話し始める。
「俺も、しにがみくんなの。」
「…は?」
突然の一言に、体が固まる。先ほどまで止まることのなかった涙は、何かにせき止められたように出なくなって。
相手はそんな僕を見ながらも、どこか悲しげな表情で語り始めた。
「───俺もね、演技が気持ち悪いって言われてたの。」
「え、」
まぁつまりはしにがみくんみたいに悪口言われてたってこと、と笑いながら話す彼に、僕は胸の奥がモヤモヤした。何か黒いものに蝕まれていくような、そんな。
「悪役しかしてなかったからかな。わかんないけど…。でも、友達が欲しかったんだ。」
友達…と僕がつぶやくと、相手は悲しげな顔で頷いた。
「………結局、できなかったけど。」
「…。」
何も言えなくなる僕をおいて、彼はひとりでに喋り始める。
「本当は、しにがみくんと話した時はもう病んでて。トラゾーとクロノアさんがいるだけで十分だったこともわかってなかった。」
…でも、しにがみくんと話した時わかったんだ、と口にする彼は満面の笑みでこちらに歩み寄る。
ガシ、と手を取られれば彼は泣きながらも微笑んで、口を開けた。
「俺と同じ人がいるってわかっただけで、すごい嬉しかった!」
手が痛い。込められたその力は、嘘じゃない。ひ弱な彼からは想像もできない力強さに、目が眩む。
ああ、彼と僕はひどく似たもの同士だ。
こうも単純な結論に惑わされていた僕たちはなんなのだろうか。情けなく、面白い。
「…僕も、嬉しいなんておかしいかな。」
───疑ってしまった僕を許して。
頬を伝う涙は熱い。
───信じなかった僕を許して。
痛いはずの手は何かを包んでいる。
───責めてしまった僕を許して。
あの日の罪悪感が笑っている。
───ダブル主演できなかった僕を許して。
また君は、そう微笑んだな。
「おかしいよ!!」
微笑む君の笑みは、目を瞑りたくなるほど眩しい。
コメント
2件
最後まで凄かった...感動です!!!!!! 思わず泣きそうになりました...俺もそういう感じあるので... 二酸化炭素さんの作品からしか得られない感動だったので 心揺さぶられました。仲間って偉大だなって感じましたね 俺、全て打ち解けられる友達とか居ないので 少し打ち解けようかなって勇気持てた気がします。 この作品や他の作品を見て俺を救ってくれた気がします。 ありがとうございました