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優羽が電話に出ると、岳大が言った。


「こんばんは。今大丈夫?」

「はい。すみません、つまらない事をあれこれ気にしちゃって」

「いや、いいんだ。ただちょっと気になったのが『mountain top7』の西村っていう人、たしかこの前行った道の駅にいたよ

うな気がして…気のせいかな?」


岳大の言葉を聞き優羽は驚いた。

岳大は優羽と西村がぶつかった所を見ていたのだ。

そこで優羽は観念したように言った。


「はい。彼は東京で私がお付き合いしていた人なんで、流星の実の父親なんです」


電話の向こうの岳大は一瞬息を呑んで押し黙る。そして少し間を置いてから言った。


「そういう事だったんだね。それにしてもすごい偶然だね。この前道の駅で偶然会って、そして今度は君が『peak hunt5』に

加わった途端向こうも同業者になるなんてね」

「私もびっくりです。彼がライバルになると知ったらなぜか急に負けたくないという思いが湧いてしまいました。でも私情を挟

み過ぎました。今はだいぶ冷静になりましたので、すみません…」


それを聞いた岳大は穏やかな口調で言った。


「過去の事実を消し去る事なんて到底無理なんだ。だから今はそれに惑わされる事なく目の前にある事に集中した方がいい。君

は常に自分の思い描く夢だけにフォーカスするんだ。そうすればいつか必ず心の迷いが晴れる時が来ると思うよ」


岳大の言葉を聞いて、優羽の頬にはいつの間にか涙が伝っていた。

岳大の言う事はもっともだ。もう自分は過去を振り返らないと決めたはずだ。

自分で選んだ道を胸を張って生きていく…そう決めて今日まで頑張って来たのだ。

そう思いながら、優羽は声を押し殺してすすり泣く。それに気づいた岳大はこの上ない優しい声で言った。


「今星は見える? 東京は星が全く見えない夜だよ」

「……はい、こちらは今夜も満天の星空です」


優羽が涙を拭きながらそう答えると、


「『peak hunt5』の『5』は何から取った数字かわかる?」


岳大が急にそんな事を聞いたので、優羽は思わず泣くのをやめて考えた。


「……お誕生日の数字とか? かな?」


優羽の答えを聞いた岳大は、ハハッと笑って「残念、ハズレ!」と言った。


「何からとった数字なのですか?」


その答えが気になった優羽が急かすように岳大に聞くと、岳大はこう答えた。


「ヒントはぎょしゃ座」

「……ぎょしゃ座の五つ星?」


優羽が嬉しそうにそう答えると、岳大は、


「ピンポーン!」


と言って笑った。


「僕が本格的に登山を始めた頃、初の冬山登山でぎょしゃ座を見たんだ。澄んだ夜空にクッキリと浮かぶ五つ星、その中でもカ

ペラがひときわ明るく輝いていてね。星座に詳しくなかった僕は、後で調べてそれがぎょしゃ座だと知ったんだ。つまり僕が初

めて覚えた星座がぎょしゃ座なんだよ」


岳大はとても優しい声で言った。

電話越しにその優しい声色を聞いていると、なぜか心がスーッと落ち着いていく。


優羽は岳大と電話をしながらふと夜空を見上げる。

優羽が見上げた視線の先には、無数の星と天の川の大きな流れが煌びやかなきらめきを放ちながら、辺り一面を賑やかに彩って

いた。

【コミカライズ原作】水面に落ちた星屑

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