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放課後、廊下。生徒指導室のドアが半開き。中から教師の怒鳴り声がもれる。
教師の声(中から)
「口答えすんなって言ってんだよ!こっちは“指導”してやってんだからな!」
日下部(足を止める。眉を寄せて)
「またやってる……。あの先生、ちょっとヒスだよな」
蓮司(斜めに掲示板に寄りかかって)
「生徒の名前より、怒鳴る回数で出席とってんじゃね?」
遥(黙ったまま足を止める。声は出さず、目だけでそっと生徒指導室のドアを見る。足の指が、無意識に縮こまっている)
日下部(気づいて)
「……大丈夫? ああいうの、嫌?」
遥(小さく首を横に振る)
「……怖いのは……怒鳴り声じゃなくて、たぶん……」
蓮司(視線を横に動かす)
「“自分もあそこに呼ばれるかも”って思った?」
遥(ほんの一瞬で肯定。まばたき一つ分の間を置いて)
「……名前、呼ばれるときの声……独特だよ。わかる。あ、自分だ、って」
日下部
「え? でも、遥って……別に問題とか起こしてなくない? あの先生に何か言われてたっけ」
遥(少しだけ目を伏せて)
「……前。スリッパ履き間違えたとき、“そういうズルするタイプか”って、言われたことある」
蓮司(一拍置いて、声を低くする)
「……見てるようで、決めつけてんだよ。あいつは“目立たないやつ”が一番嫌いなんだろ」
遥(ふっと息を吸って、でも吐けないまま)
「……こっちが何言っても、逆になる。言い訳か、開き直りか、黙ってたら認めたことになる」
日下部(不満げに)
「そんなん、理屈通らねーだろ。……先生って、“正義”じゃなきゃいけないはずじゃん」
蓮司(静かに笑って)
「“見せる正義”な。“中身”はいらねーんだよ」
遥(その言葉に、小さくうなずく)
「……そう。“中身”……こっちにしかないのに」