第24話:未来を測る試験
冒頭
「最近、ホームレスが減ったね」
夕暮れの街角。
まひろは、灰色のパーカーに水色の短パン。少し大きめのスニーカーを履き、コンビニの前でペットボトルを両手で抱えていた。
無垢な瞳で、道を歩く人々を見ながらつぶやいた。
「昔は行き場のない人たちは無視されてたけど、貧困向け試験制度が始まってからお金に困る人がいなくなったね」
隣のミウは、ラベンダー色のワンピースにモカのカーディガン。髪を後ろでまとめ、イヤリングを揺らしながら、ふんわり笑った。
「え〜♡ そうだよぉ。
“未来適性試験”に合格すれば、病気のない暮らしも支援も手に入るんだもん。
みんな社会に貢献できて、安心できるんだよ♡」
コメント欄は「素晴らしい制度」「未来に平等が来た」「安心の国ヤマト」で溢れていた。
勧誘
街の案内所。
薄汚れたコートを着た男性が、職員に声をかけられていた。
「あなたも未来適性試験を受けてみませんか?」
「……試験なんて、俺にできるのか」
「もちろんです。受ければ支援が受けられますし、“社会貢献”にもなります」
男性は震える手で受験申込書にサインした。
その目は不安に揺れていたが、職員はにこやかに肩を叩いた。
「大和国に守られる市民として、一歩を踏み出すのです」
裏の現実
冷たい研究室。
先ほどの男性は薄緑の椅子に座らされ、額にセンサーを貼られていた。
「これは心理テストです。リラックスしてください」
だが流れるのは、恐怖と快楽を交互に与える 心理刺激映像。
耳元では不安を煽る音と「未来を信じろ」という声が繰り返される。
別室では薬の投与を受ける人々。
彼らの心拍や脳波はモニターに映され、ネット軍のデータベースに刻まれていった。
「社会貢献」という言葉は、実験に耐える人間を正当化する看板にすぎなかった。
無垢とふんわり同意
夜の配信。
まひろは水色の短パンの裾をいじりながら、無垢な顔で語った。
「ぼく……ただ“困ってる人が助かればいいな”って思っただけなのに、もう“未来のための試験”になっちゃった……」
ミウはイヤリングを指で揺らし、やわらかな笑みを浮かべた。
「え〜♡ でも、それって素敵なことだよぉ。
だってみんな、“社会貢献”しながら安心できるんだもん♡」
コメント欄は「その通り」「未来のために感謝」「試験は希望」と称賛の声で埋め尽くされた。
結末
暗い部屋で、緑のフーディを羽織った**Z(ゼイド)**が研究所の映像を眺めていた。
勧誘された男性が恐怖映像に目を見開き、腕を震わせる様子がモニターに映る。
Zは冷たい声で笑った。
「“社会貢献”とは便利な言葉だ。
支援をエサに、人をモルモットに変える……これぞ未来の仕組みだ」
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