――私が春人についていくと、彼は私の部屋に入ろうとした。
それは何とか止めなければ、と 私はドアの前に立ちふさがった。
「ここ、私の部屋だから、入らないでほしいんだけど…」
「いやさ、どんな部屋か気になるだろ? 見るぐらい良いじゃないか。見るだけだから。」
「本当に?見るだけだからね?絶対だよ?」
「おうっ!」
春人はそう返事して、ドアを開けた。
「お〜〜っ!めちゃ部屋綺麗だな!」
「うん、まあね。結構 整理整頓は頑張るタイプだから。」
「七葉、昔からそうだよな。」
「うん。」
そんな何気ない会話をしながら、春人はまじまじと部屋を観察していた。
「――高校、楽しみだな!」
「! うん、めっっちゃ楽しみ!見てる限り、良い感じだよ!」
「___でも、俺はもう…」
「え?」
「ううん、何でも無い。」
「??」
春人は、また謎の言葉を発した。
さっきから健人くんの話題を出してきたり、本当何なんだろう…?
でも、これは聞いてはいけない気がしたから、あまり深堀りはしなかった。
「ふ〜っ!今日は楽しかった!俺、帰るわ。」
「えっ、もう帰るの!?まだ部屋見ただけじゃん…」
「いや、色々やる事あるし…」
「春人は無いでしょw」
「いや、用事があるんだって。」
「ふーん…」
この言い訳の仕方、絶対に嘘だ。
でも、これでは家に来た意味なんて無いんじゃ…
私は引き止めようと思ったけど、やっぱり辞めた。
「じゃ、また高校でーw」
「あ、うんw」
「バイバイ!」
「おう。」
春人は、何事もなかったかのように笑顔を見せ、帰っていった。
___私にあんな事言われたのに、何とも思ってない…?
もしかして…… あれは嘘!?
そんな馬鹿な……
たぶん、真剣… だよね?
私はこれ以上何も考えたくなくて、自分の部屋に戻った。
―――4月8日
今日は、高校生活初日の 重要な日だ。
新しい高校は いきなりで慣れないけど、春人と一緒なら乗り越えられる―――!
そう思っていた。
すると、後ろから 誰かに肩を押された。
「七葉〜〜!」
「あっ、春人ー!久しぶり!!」
「おう、久しぶりだな!家行った時ぶりか?」
「うん、たぶん。」
その後 会話はプツンと切れ、しばらくの間沈黙が続いた。
だけど、それをかき消すように 春人が話題を振ってきた。
「……健人のやつ、どこ高行ったんだろうな??」
「うーん、私と同じ系統の学校のはずなんだけど…… どこだろ…?」
「元々 緑宝石高等学校に行くつもりだったんだろ?健人も。」
「……うん、そうだね。」
そう、健人くんも 元は私と同じ高校に行くつもりだった。
でも、あれをきっかけに 約束は破られ、一生会えなくなるという事態にまでなってしまった…
「…っ」
私がまた思い返しそうになっていると、春人が空気を読んで 話してきた。
―――そう思ったけど、それは謎の言葉だった。
「もう一度やり直せるチャンスは、いくらでもある。」
「……、?」
「…まだ好きなら、もう一回付き合えるかもな。」
春人は 少し投げやりと思われる感じで言葉を放ち、私に背中を向けて 歩き出してしまった。
また言葉の意味は理解できなかったけど、その言葉には希望が込もっている気がした___。
「(謎な人……)」
「―――皆さん、こんにちは!私はこのクラスの担任となる『木川 葎(きかわ りつ)』です。 よろしく!」
先生の自己紹介に、クラスの生徒は「よろしくお願いします」と 何となく声を合わせて言った。
「おや、元気が無いようだな?もっとやる気・元気出していくぞー!」
「はいっ!」
その一言に、生徒は さっきと明らか違う、気合の込もった声を上げた。
……それにしても木川先生、フレンドリーな人だな…。
中学の時の先生は 頑固で厳しく、こんなに最初から 馴れ馴れしく無かった。
私は人と接するのは苦手だけど、最初からこんな風なら 結構話しやすそう……!
そんな思いを寄せた――。
―――休憩時間
「(高校生活、楽しくなったら良いなぁ……)」
私のクラス、いやこの高校には、残念ながら 友達は居ない。
居るのは春人ただ一人だけなのに、その彼とでさえ クラスが離れてしまったんだから…。
「(せめて春人とは同じクラスが良かったなぁ…… でも、初対面の人に 第一印象って重要だよね…!)」
クラスはもう決まってしまったから仕方無いけど、また友達を作れば良いんだ!
そうは分かっているけど、私は内向的で 友達を作るのには時間がかかるタイプ。
そんな私が心を許せるのは…… 春人だけなんだよねぇ……、、
____私がもんもんと考えていると、ふと 斜め前の席の人が 私を見た。
「え!?」
私の驚く声は 周りのザワザワした声でかき消されたけど、私は驚きを隠せずにいた。
なぜなら………―――
「七、葉…?」
「け、け…… 健人、くん……?!」
その相手が、健人くんだったから……
「そんな、な、なんで!? 高校は違うんじゃないの!?ねぇ、嘘と言ってよ……」
試しに頬をつまんでみても、しっかり痛い感覚はする。
やっぱり、幻じゃ無い………
「最っ悪……」
「…」
思わず心の声が漏れて、健人くんは黙り込んでしまった。
こんな些細な言葉でも、傷ついてしまうタイプなのは 私が誰よりも知ってる。
でも今は、こんな事 言わざるおえないでしょ……。
―――だって、元カレが同高なんて……
コメント
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話が大変長くなり、申し訳無いです💦💦 たぶん次話で完結です👍️👍️ いや、完結させます🔥