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第4話:改変された法
配信の幕開け
「こんばんは〜、“はごろもまごころ”だよ!」
まひろは、グレーのパーカーに水玉のハーフパンツ。足首にはキャラクターのバンドをつけていて、膝を抱えながら無垢な表情を見せていた。
「ねぇミウおねえちゃん……この前のニュースで“法案”のことやってたんだけどさ。スポンサーのために作られてるんじゃないかなって思っちゃった」
ミウは、ピンクのブラウスにピンクのロングスカート、髪はゆるく巻いてサイドでまとめ、小さなリボンのイヤリングを揺らしていた。
彼女はふんわり微笑み、まひろに寄り添うように言った。
「え〜♡ もし本当にそうなら悲しいよねぇ。国のルールなのに、お金のためって……国民は置いてけぼりだよね」
コメント欄には「知ってた」「やっぱり利権」「国の恥だ」の言葉が並び始める。
Zの仕掛け
暗い部屋で、**Z(ゼイド)**がパソコンに向かっていた。
黒いキャップを深くかぶり、カーキ色のジャケットの袖をまくりながら、画面を操作する。
モニターには国会の映像が映り、AIが議員の発言を切り取って繋げていく。
「市民のために……」という言葉に、別の発言を組み合わせる。
「……スポンサー企業の期待に応えるために」
自然すぎて違和感のない映像が完成する。
さらにZはBotを大量に稼働させ、SNSに一斉投稿させた。
「#スポンサー法案」
「#市民無視」
「#金のための政治」
瞬く間にトレンドは埋まり、怒りが拡散した。
炎上とデモ
街頭には「スポンサーのための法案反対!」と書かれたプラカードが並んだ。
学生、労働者、子連れの母親までが集まり、声を張り上げる。
最初は平和的だったデモは、Botによる偽情報で煽られていく。
「議会で可決は確定」「裏で賄賂が動いている」
――根拠のない噂が“ニュース”として広がり、群衆は次第に暴徒化していった。
石が投げ込まれ、ガラスが割れる。
警官との衝突で負傷者が出て、現場映像がSNSに拡散。
「国民が立ち上がった!」と称賛する声と「ただの暴力だ」と批判する声が交錯する。
改変された法
政府はデモに押され、法案の条文を慌てて修正。
だが拙速な改変は穴だらけで、解釈の揺れが次々に見つかった。
結果、裁判所は案件ごとに真逆の判決を出し、行政は混乱。
国民は「結局どっちが正しいのか分からない」と不信感を募らせた。
無垢とふんわり同意
その夜の配信。
まひろはグレーのパーカーの袖をぎゅっと握り、瞳を揺らして言った。
「ぼく……ただ“スポンサーのためじゃないのかな”って思っただけなのに、ケガ人まで出ちゃった」
ミウはふんわり笑い、小さなリボンのイヤリングを指で軽くつまんだ。
「え〜♡ でも、それで国民が“声をあげる大切さ”を思い出したんだよ。
混乱は痛いけど……気づきって、そういうものじゃないかなぁ♡」
コメント欄は「その通り」「立ち上がる勇気をありがとう」「混乱も必要だった」で溢れていった。
結末
Zは画面を見つめ、低く笑った。
「法なんて、紙切れだ。少し切り貼りして、火をつければ勝手に崩れる」
モニターには次のターゲット――国際機関の会議映像が映っていた。
国連のロゴに、赤いラインが走る。
> 無垢な疑問とふんわり同意、その裏で“改変された法”は国を揺らし、社会を分断する新たな炎を生んでいた。