あまりにもあっけなく通り雨のように過ぎ去っていったから、全部幻だったんじゃないかと思う時がある。遠くからは見えているのに、近づくと消えてしまう夏の暑さが見せた陽炎のような幻。
だったら初めからなかったことにすればいい。過ごした時間も交わした言葉も、声も香りも記憶も全部なかったことに。
「ん……」
枕元で聞こえるバイブ音を頼りに手探りで携帯を探し出し、ぼやける目を擦りながら画面をタップすると裕斗からのメッセージが開く。もう3日続けて届いている裕斗のメッセージの内容は私の体調を気遣うもので”ちゃんとご飯は食べているか?”とか”しっかり寝ろ。疲れを溜めるな”とかまるで実家のお母さんのような文面を送ってくる裕斗は、あの日のことについては一切触れない。
勘のいい裕斗だから、きっと全てを察しているんだと思う。それでいてこんな風に私のことを気に掛けてくれていると思うと有難いと思う*************
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