テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
突然の金原による提案に、櫻子はもちろん一同は、何が何だかと一瞬にして静まり返る。
そこへ、お浜の渇が飛んだ。
「キヨシ!!あんたねぇ、祝言挙げたいのか、櫻子ちゃんを女学校へ通わせたいのか、どっちなんだよっ!」
「あっ、確かに!お浜の言う通りだなぁ。っつーか!金原の屋敷は、売り飛ばされたんだぜ?!八代の兄貴、どうゆうことですかい?!」
「うん、龍、そうだが、心配するな、こちらは、損はしていない。山根の親分も、急な話だからと、それなりに、色を付けてくれた」
八代は、冷静に答えるが、当の龍は、なんだそりゃと、噛みついて、その脇では、金原が、お浜に頭を小突かれていた。
なんだかんだ大騒ぎになり、櫻子は、おろおろするばかりだった。
おまけに……。
「あーー横浜まで、どうやって、珠子の荷物運ぶんすっかぁー?!」
虎が、どたりと地面へ崩れこみ、声をあげた。
「ちょっと待った!虎!どうゆうことだい!」
「なんだか、気が変わらないうちにって、ハリソンさんが、珠子を連れて……」
「はあ?!横浜へ行っちまったのかいっ?!」
お浜の叫びに、虎がごちる。
「お浜さん、俺っちが、横浜まで、走るんすっかぁ?!」
ハリソンと珠子は、汽車に乗って行ってしまった。それを追いかけ、人力車で走るというのは、どう考えても無理な話しだった。
「取りあえず必要なものを揃えて、誰かが、汽車で向かうか……」
金原も言いつつ、面倒な話だと、渋っている。
「まったく!珠子にしても、ハリソンにしても、勝手なことばかりしやがって、憎まれっ子世にはばかるとは、このことだよっ!!」
お浜は、頭から湯気を出す勢いで、怒り狂っていた。
そして。
「どうせ、出ていった人間だ!!ヤスさん!キクさん!ちょいと来ておくれっーー!!」
裏方のヤスヨとキクを呼びつける。
どこか、いつもと違うお浜の呼び声に、ヤスヨとキクは、慌てて奥向きからやって来た。
「お、お浜さん、ど、どうしたんだい?」
目が吊り上がっているお浜の顔つきに、呼ばれた二人は、何事が起こったのかと、小さくなっている。
「珠子が出ていったよ!今から、大急ぎで、珠子の部屋にあるもの、荷造りするよ!!」
「え?!お浜さん?!」
ヤスヨが、問いただすが、お浜は、塩もってこいとまで言い出して、もはや、怒り心頭から、何を言ってるのか分かってないようだった。
そんな姿と、珠子が出ていったという言葉に、ヤスヨもキクも、良く分からないけど、分かったよと、珠子の部屋へ向かって行った。
「で!柳原の旦那!あんた、なんで、へたりこんでいるのさっ!!さっさと、お動きよ!!あんたの娘がやらかしたんだろっ!!」
怒鳴られ、土下座で謝っていた圭助は、更に、頭を下げて、申し訳ございませんと、お浜に詫びを入れる。
「ああ!!イライラするねっ!あんたんとこと、取引してる荷運びに声かけて、大八車を用意しなっ!!礼儀もわきまえず、出ていった女の荷物なんぞ、全部送り付けてやんなきゃ、筋が通らないだろっ!捨てられないだけ、ましなのに、感謝しなって、あたしゃー、誰に言やぁ、いいんだよぉっ!!」
お浜の剣幕に、男達は見惚れていた。
「なっ?何事も、お浜にまかせりゃ、上手く行くんだよ」
八代が、龍へ言う。
「はあ、なんだかわかんねぇけど、とにかく、珠子が居なくなるってのは、朗報だわ」
毎日、現場に追いかけて来られていた龍は頬を緩めると、
「虎!柳原の旦那乗せて、大八車の用意に行け!」
虎に命じた。
「虎ちゃん!!」
お玉が、食べかけのあんパンを差し出している。
「おっ!お玉!くれるのかっ!」
虎は喜び勇んで、あんパンを受けとると、かぶりついた。
その様子に、金原は、よだれベタベタだろと、顔をしかめ、お浜は、早くおしよ!日が暮れるだろっ!と、この勢いについて行けず、ぼんやりしている圭助へ渇を入れた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
1,983
#宵待ち亭
#夢