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「YouTubeライブ配信でデビュー曲の方向性を決める……!?」
事務所の会議室に、向井沙也加の甲高い声が響き渡った。
透き通るような肌に圧倒的な美貌——まさに「顔面国宝」と呼ぶにふさわしいビジュアルを持ちながら、その瞳はオタク特有のギラついた熱を帯びている。
「黒岩P、正気ですか!? 普通はデビュー曲なんて裏で完璧に作り込んでから『ドーン!』とお披露目するのが鉄則じゃないですか! 配信でファンの意見を聞きながら決めるなんて、そんな生ぬるいやり方でB小町……ううん、C小町の伝説が作れますか!?」
「沙也加、うるさい。声が大きい」
沙也加の隣で、宵闇灯が冷ややかな視線を投げかける。
若手読者モデルとしてティーンから絶大な支持を得ている灯は、腕を組みながらアンニュイな表情で息を吐いた。
「でも、黒岩さんの狙いも分からないでもないかな。今の時代、完成されたものをポンと出されるより、『一緒にグループを作っていくプロセス』を見せる方がバズりやすい。SNSのバズを舐めちゃダメ」
「灯ちゃんの言う通りよ」
デスクに肘をついた黒岩Pが、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「うちの事務所には、チャンネル登録者数200万人を超える大看板『うさぴょん!』がいる。今回のライブ配信は、うさぴょんのチャンネルとの合同コラボ枠でやるわ。一気に数万、ヘタしたら十万単位の同接(同時接続)を集めた状態で、C小町のお披露目とデビュー曲決定企画をぶち上げる」
「う、うさぴょんさんとのコラボ配信……!?」
沙也加が「推しと共演!?」と言わんばかりに泡を食って卒倒しそうになるのを、マネージャーの康弘が慌てて支える。康弘は苦笑いしながら私に目配せを送ってきた。
「美裕、大丈夫か? かなり思い切った売り出し方だけど……」
「大丈夫だよ、康弘」
私は胸に手を当て、深く息を吐き出した。
前世の知識があるからこそ分かる。現代のエンタメにおいて、YouTube配信は最大の宣伝場であり、同時に『狂気』が剥き出しになるリアルな戦場だ。
「むしろ、望むところだよ。普通にデビューしたって、ただの『B小町の二番煎じ』で終わる。私たちが本物だって証明するには、最初から世間の目に晒された方がいい」
「……ふん、威勢だけはいいじゃん」
部屋の隅でゲーム機を弄っていた高梨冴子が、ゆっくりと顔を上げた。
ボサボサ頭の天才クリエイターは、不敵な笑みを浮かべて私を指さす。
「いいよ、ライブ配信。リアルタイムでアンチもファンも湧く中で、あえて『アンケート』を取ってみようよ。王道アイドルソングが良いか、それとも——私の作る『劇薬』が良いか」
**【配信当日:うさぴょんねる 生放送中】**
『はいどーもー! みんなのアイドル、うさぴょんだよ〜っ! ぴょんぴょん!』
画面の向こうで、着ぐるみ風の衣装を着た看板YouTuber・うさぴょんがテンション高くカメラに手を振る。コメント欄は爆速で流れていく。
《うさぴょんきたー!》
《今日の重大発表ってなに?》
《新人アイドルのお披露目ってマ?》
「今日はね! なんとうちの事務所から新しくデビューする超大型新人グループ『C小町』のメンバーが来てくれてまーす! みんな、入って〜!」
うさぴょんの合図で、私たち三人はカメラの前に立った。
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#【推しの子】
#SAKAMOTODAYS
おとうふ 紹介文読んで🙇
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りな
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センターに立つ私、榊美裕。
左に圧倒的カリスマの天才モデル、宵闇灯。
右に絶世の美少女、向井沙也加。
画面に三人が映し出された瞬間、チャット欄のスピードが跳ね上がった。
《顔面偏差値バグってて草》
《真ん中の子めちゃくちゃ可愛いんだけど!?》
《灯ちゃんじゃん! まじでアイドルやるの!?》
沙也加は緊張でガチガチになりながらも必死に笑顔を貼り付け、灯は慣れた手つきでカメラに軽く手を振る。そして私は、前世からずっと憧れていた「アイドルの第一歩」として、最高に輝く微笑みをカメラに向けた。
「はじめまして! C小町の榊美裕です!」
『そして今日はなんと! C小町のデビュー曲のコンセプトを、この配信のアンケートで決めちゃいたいと思いまーす! 候補曲を持ってきてくれたのは、あのボカロ界の天才・高梨冴子ちゃん!』
画角の外から、ダボダボのパーカーを着た冴子が画面に入ってくる。コメント欄はさらに荒れた。《冴子P!?》《マジかよ》《メンツ豪華すぎるだろ》
冴子はマイクを握ると、ダウナーな声でカメラを睨みつけた。
「はいどうも。冴子です。今日用意した選択肢は二つ。
【A】TikTokでバズりそうな、王道でポップで可愛いキラキラアイドルソング。
【B】美裕の『ドロドロした内面』を剥き出しにした、エレクトロでダークな変態的キラーチューン。……さあ、リスナーの愚民共、どっちが聴きたい?」
《B一択だろwww》
《冴子節炸裂してて草》
《王道も見たいけど冴子のダーク系はヤバい》
《真ん中の子、見た目あんな清楚なのにドロドロしてんの?》
アンケート機能が画面に表示され、メーターが激しく動き出す。
沙也加が隣で「ちょっと冴子先生! 美裕ちゃんに変態とかドロドロとか変なラベル貼らないでください!」と焦っているが、コメント欄は大盛り上がりだ。
その時、チャット欄に悪意あるコメントが紛れ込み始めた。
《てか真ん中の榊美裕ってやつ、元男だろ?》
《え、マジ? トランスジェンダー?》
《ネカマアイドルかよワロタ》
《B小町の偽物がニューハーフ連れてくるとか世末w》
配信のアンチコメント。
画面の端で見ていたマネージャーの康弘が顔を青くし、黒岩Pが眉をひそめる。うさぴょんが一瞬固まり、沙也加が怒りで顔を真っ赤にして口を開こうとした。
——それを、私は手で制した。
逃げない。ここで怯んだら、前世の自分が納得いかなかった「嘘で固められた世界」に負けることになる。私はトランスジェンダーであることを隠してアイドルになるつもりなんて最初からない。
私はマイクを握り締め、カメラをまっすぐ見つめた。
「——そうですよ」
配信の空気がピンと張り詰める。
「私は元々、男として生まれました。葛藤して、傷ついて、それでも自分の『なりたい自分』を選ぶために、女の子として生きることを決めました。……気持ち悪いって思う人もいるかもしれない。偽物だって笑う人もいるかもしれない」
私は一歩、カメラに近づく。
瞳に『推しの子』の世界で生き抜く強い光を宿して。
「でも、アイドルが『夢を見せる仕事』なら……自分の性別すら超えて夢を追いかける私ほど、アイドルに向いてる人間はいないと思ってます。私のこの『嘘』と『泥』の半生、全部歌に乗せて証明してみせます」
静まり返るスタジオ。
そして、一瞬の静寂の後——
画面のアンケート結果が【100%】に振り切れた。
**【B:冴子のダークでドロドロした変態的キラーチューン —— 89.4%】**
コメント欄が狂ったような速度で埋まっていく。
《かっこよすぎだろ……》
《鳥肌立った》
《美裕ちゃん推すわ》
《冴子、最高の曲作ってやれ!!!》
冴子が口元を歪め、心底楽しそうにニヤリと笑った。
「決まりだね。……最高だよ美裕。アンタのその歪な美しさ、最高の曲にして世界に叩きつけてあげる」
黒岩Pが満足そうに煙草(未点火)を咥え直し、振付師の坂谷が「うわ〜、これダンスの構成めちゃくちゃ激しくなるやつじゃん!」と頭を抱えながらも嬉しそうに笑う。
前世の無念を晴らすための、私たちの第一歩。
C小町のデビュー曲は、型破りな「異端の産声」として産み落とされることになった。
コメント
1件
めっちゃ熱かった…!!🔥🔥 配信でデビュー曲決めるって斬新すぎるし、美裕ちゃんがトランスジェンダーであること隠さずカメラの前で話したシーン、マジで泣きそうになったよ…😭💕 「性別すら超えて夢を追いかける私ほどアイドルに向いてる人間はいない」——この台詞、心臓掴まれた…! 冴子の「歪な美しさ、最高の曲にしてやる」も痺れるし、C小町の異端な第一歩、めちゃくちゃ応援したくなる!! 続きが気になって仕方ないよ〜!✨