テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「マリアンをかえすんだなー!」
「ここにいるのはわかっているんだなー!」
修道院の門の前で、大男が叫ぶ。
修道士たちは顔を見合わせた。
「なんだこいつは」
「そんな女はおらん」
「うそはいけないんだなー」
ジョンはむっと頬を膨らませた。
すると一人の修道士が前へ出る。
「帰れと言っている!」
どんっ!
胸を突き飛ばされた。
ジョンは二歩ほどよろける。
だが転ばない。
修道士は少し驚いた顔をした。
「いいかげんにしないとおこるんだなー」
ジョンは六尺棒を持ち上げた。
周囲の修道士たちが身構える。
しかしジョンは首をかしげた。
「最後に聞くんだなー」
「マリアンはいるんだなー?」
「おらん!」
「そうかー」
ジョンは残念そうにうなずいた。
そして次の瞬間。
ぶおんっ!!
六尺棒が門へ叩きつけられた。
ばきいいいいっ!!
分厚い木の門が真ん中から砕け散る。
木片が雨のように飛んだ。
修道士たちは目を見開く。
門の向こうまで見える。
ジョンはのんびりと言った。
「じゃあ探すんだなー」
「なっ!?」
「お、おい止めろ!」
修道士たちが慌てて飛び出す。
だがジョンは六尺棒をくるりと回した。
「邪魔するとおこるんだなー」
その声だけは妙に本気だった。
門での騒ぎを聞きつけ、
ガイが中庭へ姿を現した。
砕かれた門。
倒れた修道士たち。
そして六尺棒を担いだ大男。
ガイは思わず額を押さえた。
「ジョン……」
「おまえまで来たのか」
「隊長さんだなー」
ジョンは嬉しそうに手を振った。
ガイはため息をつく。
そして静かに剣を抜いた。
しゃりん――
鋼の音が響く。
「悪いが通すわけにはいかん」
「そうかー」
ジョンも六尺棒を構える。
次の瞬間。
ガイが地面を蹴った。
鋭い斬撃。
だがジョンは棒で受け流す。
がんっ!
火花が散る。
続く二撃、三撃。
ガイの剣は速い。
しかしジョンはことごとく受け止めた。
370
308
61
40,435
「むう」
「隊長さん強いんだなー」
そう言いながら、
ジョンは六尺棒を振り下ろした。
ぶおんっ!
ガイは横へ飛んで避ける。
石畳が砕けた。
「……っ」
ガイの目が細くなる。
ジョンはのんびり笑った。
「隊長さんも強いけど」
「おらはもっとつよいんだなー」
その頃。
修道院の奥。
閉じ込められていたマリアンは、
外から聞こえる騒ぎに耳を澄ませていた。
怒号。
金属音。
何かが砕ける音。
そして――
「マリアンー!」
聞き慣れた声。
マリアンの瞳が大きくなる。
「その声は……」
扉の向こうから返事が飛んだ。
「助けに来たよ!」
ロビンだった。
マリアンは思わず笑みを浮かべる。
胸の奥にあった不安が、
少しだけ軽くなった。
廊下の角から、
ウィルが面白そうに二人を眺めていた。
「いいのか?」
「金は頂いていかないのか?」
ロビンは鍵を外しながら答える。
「また今度だ」
そして迷いなく言った。
「マリアンの方が大事だ」
一瞬。
マリアンの頬がわずかに赤くなる。
だがロビンは気づいていない。
ウィルだけが、
にやりと笑った。
「でも――」
ロビンは振り返った。
「マリアンをこんな目に合わせた」
その瞳には怒りが宿っていた。
「礼をしなきゃな」
マリアンが何か言おうとする前に、
ロビンは走り出した。
「ロビン!」
「すぐ戻る!」
修道院の玄関前。
ヘレフォード司教は修道士たちに囲まれながら、
状況の報告を受けていた。
「だから言ったのだ!」
「城へ送るべきだったのだ!」
「司教様!」
「ご安心ください!」
その時だった。
ひゅんっ!
一本の矢が飛来する。
どすっ!
司教の足元へ突き刺さった。
「ひいっ!?」
司教が飛び上がる。
続いて。
ひゅんっ!
どすっ!
ひゅんっ!
どすっ!
矢が次々と飛来する。
右。
左。
背後。
逃げ道を塞ぐように。
あっという間に司教の周囲は矢だらけになった。
修道士たちも悲鳴を上げる。
「ま、守れ!」
「弓兵だ!」
だが姿は見えない。
遠くの回廊の先。
ロビンが静かに弓を引いていた。
次の矢が司教の帽子をかすめる。
ばさっ!
帽子が吹き飛んだ。
「ひいいいいっ!」
司教は腰を抜かした。
ロビンは冷たい目で見下ろす。
「ガイはどこだ」
「ガイを呼べ!」
「は、はい!」
修道士の一人が慌てて駆け出す。
司教はその場にへたり込み、
震えながら祈り始めた。
ロビンは弓を下ろす。
「それでいい」
小さく呟き、
踵を返した。
その頃。
中庭。
がんっ!
ガイの剣とジョンの六尺棒がぶつかる。
「むうー」
「隊長さんしつこいんだなー」
ジョンが唸る。
その時、
一人の修道士が息を切らせて駆け込んできた。
「た、大変です!」
「司教様が!」
ガイの顔色が変わる。
「何だと?」
「弓で狙われています!」
「ロビンか……!」
ガイは舌打ちした。
「こんな時に」
ジョンが嬉しそうに言う。
「おらとの勝負なんだなー」
「後だ」
ガイはそう言うと、
ジョンの胸を蹴り飛ばした。
どんっ!
ジョンが数歩下がる。
その隙にガイは駆け出した。
玄関へ向かう。
「待つんだなー!」
「あとでだ!」
ガイの姿が消えると、
物陰からユンナが現れた。
「ジョン!」
「おおー」
「マリアンは?」
「助けた」
「じゃあ撤退よ」
ユンナは周囲を見回す。
兵たちも混乱していた。
今なら逃げられる。
「帰るんだなー」
ジョンは六尺棒を肩へ担いだ。
そして二人は森へ続く道へ走り出した。
修道院の鐘だけが、
いつまでも騒がしく鳴り響いていた。
森の入口。
マリアンは駆けてくるロビンを見ると、
思わず笑った。
「遅いわ」
「ちょっと用事を思い出してさ」
ロビンは頭をかいた。
ユンナが呆れた顔をする。
「司教を泣かせる用事?」
「あれは必要だったんだよ」
「はいはい」
ジョンは嬉しそうに言った。
「みんなそろったんだなー」
そして一行はシャーウッドの森へ消えていった。
コメント
1件
おお、ジョンが門を六尺棒一発で粉砕! その破壊力と“のんびり口調”のギャップがたまらなかったです。ガイとの剣術対決も火花散る迫力で、そこにロビンの矢が加わって一気にスリリングに。そして「マリアンの方が大事だ」の台詞には胸が熱くなりました。仲間が集まって森へ消えるラスト、続きがめちゃくちゃ気になります!