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だが、明日のクリスマスが終わったら、彼は、この部屋で再び一人の夜を過ごしていく。
奈美がこの部屋から自宅に戻ると思うと、とてつもない寂しさが湧き上がってくるのを感じていた。
もう奈美なしの生活は考えられない。
そう思うほど、豪は奈美を愛している。
「なぁ奈美。俺たち…………同棲しないか?」
「……え?」
突然の提案に、きょとんとした表情で豪を見る奈美。
『一緒に暮らす』という事を全く想定していなかったのか、彼の問い掛けにも答えず固まったまま。
「俺は、奈美と離れて過ごすなんて考えられない。一秒でも長く、奈美と一緒にいたいんだ」
天井を見つめながら、無言で考えを張り巡らせている彼女に、豪は不安に駆られる。
「嫌……か?」
「ううん、嫌じゃないよ。豪さんがそう言ってくれて嬉しい。けど私は不器用だから、仕事と家事の両立ができるかな……」
豪は、彼女の不安の芽を摘み取るように、濃茶の髪を撫でた。
「それは二人で分担していけばいい。だから何も心配する事はないぞ」
彼の言葉に安堵の表情を見せながら、彼女の唇が緩やかな弧を描く。
「豪さんがそう言ってくれて嬉しい……。料理のレパートリーが少ないから頑張らないと……」
奈美の言った言葉に、豪は口元を微かに綻ばせた。
「そうか……。奈美と一緒に住み始めたら、奈美の手料理が食べられるんだな……」
彼女の小さな頭を胸に引き寄せ、唇を落とした。
「でも同棲する前に、まずは奈美の両親と俺の両親に結婚の挨拶をしないとな。ってか俺、早く奈美と同棲したくて何か焦っちゃってるな……」
彼は思わずハハっと笑ってしまった。
「うちは母親しかいないし、同棲も結婚もすんなり許可すると思うよ」
奈美の言葉に、豪の気持ちが一瞬沈んだような気がした。
(母親しかいない……?)
そんな心情が、彼の表情に出ていたのだろう。
奈美が、淡々と言葉を紡ぎ始めた。
「父は……私が高校を卒業してすぐに肝臓ガンで亡くなったの。兄弟姉妹もいないし、実家には母しかいないの」
「そうだったのか……」
「それよりも、豪さんのご両親が、私みたいな学も何も取り柄の無い女との、同棲と結婚を許可してくれるかな……」