テラーノベル
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奏と怜に、結婚祝いとしてCDをプレゼントしに、二人の自宅を訪れた際、美花が圭の事を想っている話をした時、怜の表情が険しかった理由も分かり、彼女の喉元が熱を帯びていく。
その時から怜は、純粋な性格の美花が、女性関係にだらしのない兄に想いを寄せ、いつか彼女が圭に傷付けられるのではないか、と危惧していたのかもしれない。
「美花。思い出したくないだろうけどさ……敢えて聞くわ。あんたがバレンタインデーの前日に会ったお義兄さんの元カノってさ、全身黒い服装で、真っ赤な口紅を付けている、黒髪のショートボブの女性?」
「…………っ!」
奏の質問に美花は言葉を失い、薄茶の瞳が、ほんの僅かに動揺する。
「…………やっぱり。私が見た女性と……同一人物か」
「…………」
奏がフウッとため息を零すと、美花はおぼつかない様子で首を縦に振った。
「でもさ……その元カノ? 自分が浮気相手だった事を美花に隠して、『別れてくれ』なんて…………ズルいよね……」
美花と奏の話を黙って聞いていた奈美が、不意に口を開く。
「私はあの時、お義兄さんと一緒にいた女性は、単なる浮気相手って思ってたけど…………元カノだったか……」
奏が、ドリンクの入ったグラスに口を運んだ後、壁に飾ってあるイラストに視線を向けながら、腕を組む。
淀んだ空気が個室内を包み、三人は、しばしの間、口を閉ざしていた。
「でっ……でもさ、連休が明けたら、私は静岡に行くし、圭ちゃんとはもう会う事がないだろうし、これでいいんだよっ」
沈んだ情調の中、美花は努めて明るく言い放ち、残りのドリンクを一気に飲み干す。
不自然なほどに軽く言い切る美花に、親友二人は、やるせない表情を美花に向けている。
「…………分かった。美花がそこまで気持ちを固めているんだったら、私は…………あんたの意思を尊重するわ」
「美花。さっきも奏が言ってたけど…………私と奏は、美花の味方だよ? 『チームしりとり』の絆は、強いんだからね?」
「二人とも…………本当に……ありがとっ……」
美花は、心の底に沈んでいた思いを、奈美と奏に話せた事で安堵したのか、目尻から大きな雫が頬を伝っていた。
「ほら! 泣かないの!」
奏が漆黒の瞳を揺らしながら、今にも泣きそうになっている。
「美花。何かあったら…………連絡してよ? 愚痴でも何でも……聞くからね?」
奈美もアーモンドアイの瞳を潤ませ、途切れとぎれに言葉を綴っている。
「なみプー……かなチー……ありがとう…………本当に…………ありが……と……う……」
美花は、出発前の貴重な時間を過ごしてくれている二人の親友に、何度も感謝の言葉を紡いでいた。
コメント
1件
おお、美花がようやく親友たちに胸の内を打ち明けられた回か…。奏が元カノの特徴をピタリと言い当てたところ、痺れたわ。やっぱり「チームしりとり」の絆、ガチだったな。美花が「もう会わない」って強がって一気に飲み干すシーン、グッときた。連休明けで距離ができる前に、ちゃんと話せてよかったね。
恵