テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
その時資料室へ続く廊下を、一人の男性が歩いて来た。
男性は良輔の同期の江口だった。
江口は営業第一部の主任をしている。つまり良輔と同じ部署だ。
江口は今担当している案件に必要な資料を、資料室へ取りに来たのだ。
江口は資料室のドアの前で立ち止まると、ドアを開けて中へ入ろうとした。
その瞬間、中からくぐもった人の声が聞こえてきた。
(誰かいるのか?)
不審に思った江口は中の様子をうかがった。
すると、激しい息遣いと机がガタつく音、そして艶めかしい女の喘ぎ声が聞こえて来た。
(ん? これってもしかして、いたしてる最中?)
江口はかなり驚いていたが、興味本位からそーっと中へ足を踏み入れる。
そして声がする方向へ足音を立てないように歩いて行った。
そして棚の陰からそっと覗いてみると、そこには腰を振る男性と喘いでいる女性のあられもない姿が見えた。
(マジかよ……)
江口は気まずそうにしかめっ面をすると、その人間が誰なのかを確認しようともう一度奥を覗いた。
その時その人物を確認してギョッとした。
なぜなら、机の上で足を大きく開いて男性に突きまくられている女が、派遣社員の塩崎絵里奈だったからだ。
(マジかよ!)
江口は信じられないといった顔をしてショックを受けていた。
しかしその瞳はしっかりと悶えている絵里奈を凝視する。
実は江口は密かに絵里奈の事が気になっていた。
江口が商品企画部へ行く時は、いつも絵里奈の動向をチェックしていた。
その理由は、今だ独身の江口は絵里奈の事が気になっていたからだ。
そしてここ最近は、絵里奈と軽い挨拶や世間話も出来る仲になっていた。
だからもうちょっと親しくなれたら、食事にでも誘おうと思っていたのだ。
しかし自分が狙っていた絵里奈は、今目の前で男に突かれまくってアンアンと喘ぎ声を上げているではないか。
江口は絵里奈の手前で腰を振っている男が誰なのかをすぐに確認した。
その男の顔を見た江口は、思わず声を上げそうになる。
(うっ、良輔か? アイツ何やってんだよ!)
江口は驚きのあまりその場に倒れそうになる。
良輔は凪子と結婚して二年目だ。まだ新婚と言ってもいい時期だ。
そんな良輔が、会社で派遣の女とセックスをしている。
江口は訳が分からずにパニックに陥ってた。
江口は凪子の事もよく知っていた。
だから二人が付き合っている頃から二人を見てきた。
良輔は結婚前から凪子にぞっこんだったし、結婚してからも愛妻家として有名だった。
そんな良輔がまさか浮気をしているとは夢にも思わなかった。
その時江口の胸に複雑な思いが過る。
江口と凪子の付き合いは、実は良輔よりも長い。
江口は昔、凪子の同期の女性と付き合っていたので、たまに三人で食事をする間柄だった。
だから江口にとって凪子は妹のような存在だ。
凪子が良輔と結婚すると聞いた時は、正直少し心配だった。
それまでの良輔の女性関係はあまり綺麗ではなかったからだ。
しかし良輔は凪子と知り合って別人のように変わった。
心を入れ替えたように誠実な男に変わったのだ。
そしてその努力の甲斐があり、見事凪子を射止めた。
良輔が真面目になったからこそ、江口も凪子との結婚を心から祝福したのだ。
しかし、今良輔は妻以外の女の胸にむしゃぶりついている。
それも社内でだ。
そして良輔が目の前で激しく突いている女は江口が狙っていた女だ。
絵里奈の白い乳房を揉みしだき、その先端を舌でチロチロと舐めている良輔を見た江口は、
急に激しい怒りに襲われた。
次の瞬間江口はスマホを取り出すと、カメラを起動させる。
そして、なるべく音がしないようにとスピーカー部分を指で押さえるとシャッターボタンを押した。
江口は無我夢中で写真を撮った。
机が揺れてガタガタと壁にぶつかる音と、二人の激しい息遣い、そして絵里奈の喘ぎ声により、
シャッター音は見事にかき消されていく。
二人は江口の存在には全く気付いていない。
10枚ほど撮影した後、江口は音を立てないようにそーっとドアまで戻った。
そして静かにドアを締めてからその場を後にした。
午後4時過ぎ、会議を終えた凪子は、トイレへ行くふりをして資料室へ向かった。
人気のない廊下を進み資料室のドアを開けると、なんとなくもわっとした空気が凪子を襲う。
それは、先ほどまでここで淫靡な交わりが行われていたという事実を示すかのような、湿った重苦しい空気だった。
凪子はそれを想像しただけで吐き気がこみ上げてくる。
しかしそれをぐっとこらえながら、速やかにボイスレコーダーを回収した。
そして何事もなかったかのように資料室を後にした。
ボイスレコーダーの録音内容が気になったが、会社で聞くのはまずいので家に帰って一人の時に確認する事にする。
夫が他の女と交わっている時の声なんて聞きたくもなかったが、確かな証拠を手に入れる為には我慢するしかない。
凪子は少し憂鬱な気分のまま仕事を続けた。
幸い、仕事に集中しているとボイスレコーダーの事はすぐに忘れた。
コメント
2件
自分の夫と 浮気相手の情事の場面の録音を、聴いて確認しなければならない凪子さんの心情を思うと辛い....😢 たまたま部屋に入った来た江口さん、証拠写真撮影📱💥good job😆👍️ 離婚に向けての証拠集めは順調のようで、とりあえず良かった~😌
江口さんはWでショック😨だけど、妹のような凪子さんのことを思うと怒り心頭💢 証拠写真は凪子さんにあげる?ボイスレコーダーもセットで言い逃れできない証拠になるね👎🤭