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俺は1人の息子を持った父だ。
自分の子供はなんて可愛いのだろうか。
毎日毎秒そう思う。
今日は夏祭りの日だった。
色んな屋台を回った後、
疲れたのでベンチに座っていると、
「パパ!僕、金魚すくいやりたい!!」
そう言いながら俺の息子はある場所を指さした。
だが、そこには何も無かった。
もしかしたら疲れすぎて
見えていないのかもしれないが。
そう思った俺は息子に金を渡した。
あまり遠い場所じゃないから
迷いはしないだろう。
そんなことを思いながら俺は眠りに落ちた。
「..パ…」
「パパ!」
そう息子に肩を揺すられながら起こされた。
「パパ、金魚3匹取れた!」
そう言いながら息子はビニル袋に入った
3匹の金魚を見せてきた。
あの破れやすいポイで3匹取れるとは…。
うちの息子は天才なのかもしれない。
「あ、水槽買わなきゃだね」
「うん!」
そう息子と話しながら家へ帰った。
そんな出来事も忘れかけていた1週間後、
俺は息子が世話している金魚の水槽を見に行った。
「案外可愛いもんだな…」
そう呟きながら見ていると
ギョロりと金魚の目玉が俺の方を向いた。
俺の喉から息が詰まる音が聞こえる。
すると、
どろりという効果音がつきそうなほど、
金魚の目玉が零れ落ちそうになっていた。
ふと、ほかの金魚を見てみると、
その金魚にあるであろう目玉が無かった。
水槽の底に目玉が沢山落ちていて、
目玉があるであろう場所には
赤黒い液体が垂れていた。
俺が言葉を無くしていた時、
ふと瞼が重くなり始めた。
こんな場所で寝たくない。
自分の部屋に行ってから眠りたい。
そんなことを思ったのも束の間、
俺はいつの間にか寝てしまっていた。
「パパ、こんなところで寝たら風邪ひくよ?」
そんな息子の声が聞こえ、
目を開けるとそこには先程の金魚と同様に
片目は目玉が零れ落ちて、
もう片方の目は赤黒い血が垂れている。
そんな姿の息子が俺の顔を覗き込んでいた。
ふと息子の口を見ると、
そこには金魚の尾びれがピチピチとしながら
息子の喉に飲み込まれていっていた。
「パパ、ダメだよ」
「勝手に僕の部屋入って金魚見ちゃったら」
息子はそう淡々と俺に言うが、
なんだかいつもと息子の声が違うような気がする。
そう思った次の瞬間、
俺は水の中にいるような息苦しさに包まれた。
まるで溺れているかのように。
俺はもがきながら部屋から逃げ出そうと、
床に這いつくばりながら部屋の扉に向かう。
そんな時、
部屋の隅にある鏡に自分の顔が映った。
そこには金魚と息子と同じようになった
俺の姿が映っていた。
それと同時に俺の体は動かなくなった。
どのくらい時間が経ったのだろうか。
そう思いながら俺は体を動かす。
俺は自分の体を動かせることに安心し
目を開けると、
ポイを持ったあの祭りの日の息子が
俺を見ていた。