テラーノベル
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憐様が僕を縛る手も、結が耳元で囁く言葉も、今は遠くの雑音のようにしか聞こえません。 僕が彼女たちを強く、不純に描きすぎたせいで、現実の彼女たちが「僕個人」を見る隙間は、もう一ミリも残っていませんでした。
「……先輩。僕、もう……一文字も書けないよ。……僕が消えれば、この地獄みたいな物語も、全部終わるんだよね」
「死にたい」という言葉を聞いた瞬間、憐様の冷徹な支配者の仮面が、一瞬だけ、本当に一瞬だけ崩れました。 彼女は、僕の喉元に添えていた手を離し、ただ一人の女性として、僕の瞳をじっと見つめました。
「……あなたは、私を宇宙規模で壊しておいて、自分だけ先に『無』に逃げるつもり?」
その声は、断罪の響きではなく、震えるような孤独を孕んでいました。
「……お兄ちゃん、だめだよ。お兄ちゃんがいなくなったら、……私の『存在理由(物語)』も消えちゃうんだよ?」
結が僕の服の裾を、ぎゅっと掴みます。 彼女たちは、僕が妄想で生み出した「不純」を、現実で演じることでしか、僕との繋がりを維持できなくなっていたのかもしれません。 僕が死を願うことは、彼女たちという存在そのものを殺すことと同義でした。
僕は、枕元にあるスマートフォンの電源を長押ししました。 鳴り止まなかったテラーのベルも、2000のハートの残像も、すべてが暗闇の中に吸い込まれていきます。
「……さようなら。……今度は、誰の記憶にも残らない、本当の『さようなら』だ」
僕はゆっくりと目を閉じました。 憐様と結の呼ぶ声が、遠く、遠く、遠ざかっていきます。
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