テラーノベル
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翌朝、涼平はすっきりした気持ちで目覚めた。
昨夜詩帆と過ごした時間を思い返すと信じられないくらい力が湧いて来る。
詩帆と一緒にいると心身共に癒され、無敵のパワーが身体中から湧き出て来る。
涼平は元気に起き上がるとシャワーを浴びて出かける準備を始めた。
今日も少し早めに出社しよう。
今の涼平は、仕事への意欲がどんどん増して来てやる気に満ち溢れていた。
意欲的に仕事に取り組んでいる涼平を見た加納は、涼平がどこか変わったような気がしていた。
「涼平、今日は昨日と打って変わって元気そうだな。恋敵問題は解決したのか?」
「はい、無事に解決しました。これでやっと仕事に集中できます。今日も頑張りますよー」
加納は思わず「おっ!」という顔をしてから言った。
「期待しているぞ! なんとしても商業施設の案件は成功させてくれ! この仕事にはうちの将来がかかってるんだからな」
「任せてください! 完璧にやり遂げますよ!」
涼平は自信に満ちた笑顔で言った。
その日詩帆は少し遅めに目覚めた。
今日は十時からの通常シフトだったので、ゆっくりでも充分間に合う。
詩帆はしばらくベッドの上でぼんやりと昨夜の事を思い出していた。
あれは夢だったのだろうか? そう思ってしまうほど、詩帆にとってはとてもロマンティックな一夜だった。
夜の海、波音、満天の星、そして涼平とのキス。
詩帆は昨夜のキスを思い出し指で唇をそっとなぞってみる。
映画やドラマで見たシーンが自分の身に起こった。
それは想像していたよりもはるかに心地良いものだった。
涼平のキスは最初は優しく、そして最後はとても情熱的だった。
涼平は詩帆の気持ちを尊重し、許可を得てからキスをした。
そんな涼平の心遣いも嬉しかった。
詩帆は、なんだか少し大人になれたような気がした。
年齢的にはもう充分いい大人なのに。そう思うと可笑しくて一人で笑ってしまう。
詩帆は元気よくベッドから起き上がると顔を洗いに洗面所へ向かった。
一方涼平は、正午少し前に集中していた設計の作業を一時中断させた。
朝から取り組んだお陰でだいぶ進んだ。
取引先からのメールチェックをした後、そろそろ昼食に出ようと立ち上がった。
「メシ行ってきます」
仲間に声を掛けると一人事務所を出た。
十月半ばの空は、どこまでも青く澄み渡っていた。
その真っ青な空を小鳥達が横切っていく。今日は晴れているので鳥達も嬉しそうだ。
涼平は空が青いだけで幸せな気持ちになっている自分に驚いた。
恋をすると普段何気なく見ている風景にも感動するのだろうか?
そんな事をぼんやりと考えながら馴染みの蕎麦屋へ入って行った。
店内はまだそれほど混んではいなかった。
涼平はカウンター席に座ると、冷やしたぬき蕎麦を注文した。
そして昨夜の事を思い返す。
詩帆の唇はとても柔らかかった。
その唇に初めて触れた男が自分なんだと思うと胸が熱くなる。
最初は緊張で力が入っていた詩帆の身体がキスをした瞬間一気に力が抜けてふらふらになっていたのを思い出し、
涼平の顔に思わず笑みが浮かぶ。
涼平は今、詩帆の事がたまらなく愛おしくて仕方がなかった。
涼平はポケットから携帯を取り出すと、
【お疲れ様。俺は今から蕎麦屋で昼飯です。昨日はありがとう。君からいっぱい元気をもらえたよ。またドライブに行こうね】
そう詩帆へメッセージを送った。
携帯をポケットにしまいながら天井付近にあるテレビに目をやると、ちょうど下田の海が映っていた。
生中継で放送しているようだ。
アナウンサーが下田の海はとても美しいエメラルドグリーン色をしていると伝えている。映像に映る海は確かにエメラルドグリーンの色をしていた。その色は詩帆が好きなセルリアンブルーにかなり近い色だった。
涼平は、いつか詩帆をこの海へ連れて行ってやりたいと思っていた。
でも今すぐ泊まりでは難しい。何かいい方法はないだろうか? そう考えていると、
「お待たせしました」
蕎麦屋のおかみさんが蕎麦を持って来てくれたので、涼平はありがとうと言って蕎麦を食べ始めた。
午後二時頃、詩帆は少し遅めの昼休みに入っていた。
サンドイッチとコーヒーをトレーに載せて休憩室へ入って行く。
先に休んでいた美佐子が、ちょうどお昼を終えて出て行く所だった。
詩帆は美佐子と少し世間話をした後、窓際の椅子に座って食事を始めた。
サンドイッチを頬張りながらバッグから携帯を取り出すと、一件のメッセージが来ていた。
詩帆がすぐにそのメッセージを開くと、涼平からだった。
メッセージを読んだ詩帆は思わず微笑む。そしてすぐに返事を打ち込んだ。
【昨日は楽しかったです。星空は最高だったしラーメンも美味しかったし。お昼にお蕎麦いいなぁ。私はワンパターンでいつものサンドイッチです。でもコーヒーは美味しいですよ♪】
そう返信してから携帯をバッグにしまった。
涼平は昼食から戻ると、また集中して仕事に取り組んだ。
あまりにも集中していたので気付くと午後三時を過ぎていた。
涼平は休憩しようとコーヒーを取りに行った後、ポケットから携帯を取り出して何気なく見る。
するとメッセージの着信があったので慌ててそれを開いた。
詩帆からのメッセージを見ると思わず嬉しくて微笑む。
こんな些細なやり取りが嬉しくてたまらない。
涼平は携帯をしまうと、しばらくコーヒーを飲みながらぼんやりと詩帆の事を考えていた。
コーヒーを飲み終えると、
(よしっ! もう少し頑張るか!)
心の中で呟いて、また精力的に仕事を再開した。
コメント
1件
プライベート特に恋愛が上手くいくと正に涼平さんのように空気も風も景色もすべてが穏やかに美しく感じると思う✨🤭 もう〜ご馳走様🙏😋 特に涼平さんが仕事にやる気が出て全力投球するパワーが出たのは詩帆ちゃんパワーの恩恵だね🥰