テラーノベル
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「……なんかもう、毎日寝てばっかで。課題もたまって、部屋も散らかって……。わかってるのに動けないんです」
椅子に座った男子は、机に額をつけたままぼやいた。
「動けない、ね」
日下部は背もたれに寄りかかりながら、ペンをカチカチ鳴らしていた。
「なんかさ……電池切れのロボットみたいで。人間じゃない気がする」
「ロボットなら、充電すりゃ復活すんじゃね」
男子が顔を上げた。
「は?」
「寝てんのも、ある意味充電だろ。お前、今たぶんフル充電中」
「でも、充電長すぎません?」
「……スマホでも、充電しすぎてコード抜くの忘れると“過充電です”とか怒られるやつあるだろ」
「それ俺っすか」
「まあな」
男子は吹き出しそうになって、でもすぐに口をつぐんだ。
「でも……周りがちゃんと動いてるのに、自分だけ遅れてる気がして」
日下部は少し黙って、それから窓の外を見た。
「……みんな同じスピードで動いてるように見えるだけだよ。止まってるやつも、隠れてるだけで結構いる」
男子は小さく息を吐いた。
「……日下部さん、なんかテキトーっすね」
「だろ? でも、テキトーでここまで生きてきたからな。案外それで十分かもよ」
ふっと、男子の肩から力が抜けた。
相談室に流れる空気は、さっきより少しだけ人間らしい温度を帯びていた。
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