第6話:大和国包囲網
配信の幕開け
「こんばんは、“はごろもまごころ”だよ!」
まひろは、モカのフード付きのパーカーにカーキ色のハーフパンツ。首元には布製のリストバンドを巻き、膝を抱えて座っている。
彼は無垢な瞳でカメラを見つめ、少し不安そうに言った。
「ねぇミウおねえちゃん……なんか世界の国々が“大和国は存在しない”って言ってるんだって。でも、そんなに必死に否定するのって、逆にほんとみたいに感じちゃうよね」
ミウは、淡いラベンダー色のブラウスに灰のスキニーパンツ。髪はゆるくポニーテールにまとめ、長いピアスを揺らしていた。
彼女は頬に手を当てて、ふんわり笑みを浮かべる。
「え〜♡ そうだよね。だって“存在しない”なら放っておけばいいのに。わざわざ否定するってことは……もしかして隠してるのかも♡」
コメント欄には「怪しい!」「逆に信じたくなる」「政府が嘘ついてる」と次々に流れ込んだ。
Zの仕掛け
黒いフーディ姿の**Z(ゼイド)**はモニターを見つめていた。
画面には各国政府の否定声明が並んでいる。
「大和国なる国家は存在しない」
「天皇が代表などという事実はない」
「ヤマトコインは実在しない」
Zは口元を歪め、数秒後にSNS用のBotを起動させた。
否定声明の映像にテロップを重ね、切り抜きを拡散する。
「“存在しない”と必死に言うほど、民衆は逆に“本当だ”と信じる。
フレーミングは否定すら武器にできる」
数分後には、「#大和国隠蔽」「#政府は嘘をついている」がトレンド入りした。
レイNewsと月刊蜜
翌朝、レイNewsの記事が拡散された。
「各国政府が“大和国否定”声明──だが隠蔽ではとの声」
「否定するほど疑惑が強まる不思議な現象」
さらに月刊蜜では「大和国包囲網」と題した特集が組まれた。
否定声明を出す各国政府の顔写真が並び、その下に「逆に信じさせる効果」と解説が添えられていた。
無垢とふんわり同意
夜の配信。
まひろはモカ色のパーカーの袖をぎゅっと握り、無垢な声で語った。
「ぼく……ただ“ほんとかな”って思っただけなのに、各国の人たちが“信じたい”って思っちゃってる。なんだか、世界がざわざわしてるよ」
ミウはふんわり笑みを浮かべ、ピアスを指で揺らしながら語った。
「え〜♡ でもそれって素敵じゃない? だって、みんなが“考えよう”ってしてるんだもん。
大和国があるかないかなんて、もうどうでもよくて、“信じたい”って気持ちが一番強いんだよねぇ♡」
コメント欄は「信じる」「政府の隠蔽だ」「未来は大和にある」で溢れた。
結末
Zはモニターに映る否定声明を再生しながら、低く笑った。
「政府が出す一言すら、俺たちの燃料になる。
否定すればするほど、真実は歪み……大和国はますます現実になる」
無垢な問いとふんわり同意、その裏で“はごろも党”とZは、各国の否定さえも武器に変え、大和国をより確かな幻想へと押し上げていった。
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