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――ああ、やっと見つけた。
重たい扉なんて、叩くより押し開けたほうが早い。
私は両手で思いきり押し、館の中へ飛び込んだ。
静かな空気がざわりと揺れる。
赤と青の光が差し込む広間は、思ったよりも重苦しい匂いがした。
こんな場所、風が通らなくちゃ息苦しい。
「わあ……!」
奥に小さな影がふたつ。
白い髪の少年と、夜みたいな髪の少女。
ふたりが揃って私を見つめていた。
「あなた……誰?」
少女が小首を傾げる。
「わたし? 風だよ!」
答えながら広間を駆け回る。裾が舞い、髪が跳ねる。
赤い光も青い影も、全部まとめて吹き散らしてしまいたい。
「閉じ込められてるなんて、つまらないよ」
私は笑って窓へ駆け寄る。けれど、外はまだ半分が白い空虚。
叩いても、揺すっても、風は入ってこない。
「外の空気がほしいの」
窓に額をつけ、私は息を吐いた。
ふたりは顔を見合わせて、声を揃えて笑った。
「ここにも風はあるよ」
「ほら、あなたにぴったりの部屋がある」
私は振り返る。
その笑みが可愛らしいのに、どこか底知れず、不思議な胸の高鳴りを覚えた。