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#離婚前提の結婚
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#恋愛
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大きな箱を抱えて入室したダミアンは、前髪と旅服のコートばびしょ濡れだが抱えている箱は雫の一つも落ちていない。
馬車から建物内に入るまでの間、必死に箱を庇いながら歩いたからだ。
「はい、これ頼まれてたもの」
「ああ。ありがとう、助かった」
レンブラントはダミアンから箱を受け取ると、一先ずソファに置く。
次いで、バスルームに入りすぐにタオルを手にして戻ってきた。
「ご苦労だったな。なにか飲むか?」
一欠片の嫌みも無く労いの言葉をかけるレンブラントに、ダミアンは信じられないものを見る目になった。
「……どうしよう。嵐が大嵐になる」
「黙れ」
(くそっ。人が親切心を出したらこれだ)
レンブラントは手にしていたタオルを力任せにダミアンに投げつけた。すぐに「痛っ」という声が聞こえてきた。
しかしフワフワのタオルが当たったところで痛いわけがないのでレンブラントは、ダミアンを無視してチェストへと移動する。
「……くらだんことを言ってないで早く体を拭け。それが終わったら、これでも飲め」
二人分のグラスを取り出して、アルコール度数高めの酒を注ぎ入れたレンブラントはダミアンに手渡した。
外は大荒れでかなり寒い。お茶より手っ取り早く暖を取ることができる酒を用意したのは、レンブラントなりの優しさだ。
その気遣いに気づいたダミアンは、ぱぁっと顔を輝かせソファーに着席する。
「いやぁー、あっちこっちで土砂崩れと通行止めでだいぶ遠回りしちゃったよ。本当に遅くなって悪かったね」
「いや、予定より早いくらいだ。本当に、助かった。俺はこういうのは、からっきし駄目なもんでな」
そう言ってレンブラントは、ちらりとダミアンが抱えてきた箱に目を向けた。わずかに口元がほころんでいる。
箱の中には、ベルの冬物の衣類や靴、その他にも帽子やハンカチといった女性が好みそうな品々が入っているのだ。
「僕、かなり本気で選んだんだぁー。ベルちゃんが気に入ってくれると嬉しいな」
「気安く呼ぶな」
「おっと、こりゃあ失礼」
ダミアンはニヤニヤと生ぬるい笑みを浮かべて、口先だけの謝罪の言葉を紡ぐ。目は”おやまぁ、ちょっと会わない間に独占欲を丸出しにしちゃって”とがっつり語っている。
そんな視線を受けたレンブラントは、そうじゃないと言って、ため息混じりに口を開いた。
「不用意に近づけば噛みつかれるぞ」
「は?」
「アレの見た目に騙されるな。……手の付けられない狂犬だ」
吐き捨てるようにレンブラントが言い終えた途端、ダミアンはぶはぁっと豪快に吹き出した。
対してレンブラントは、肩を竦めてグラスを傾ける。
「はっはは、狂犬だなんて大袈裟なこと言っちゃ可哀想だよ。ちょっと窓から飛び降りようとしちゃった、可愛らしいお転婆な女の子なだけじゃん。レンは仕事人間で、あんまり女の子と触れ合う機会がなかったから知らないかもしれないけれど、男がいつでも少年でいたいのと一緒で、女の子だって──」
「そうじゃない」
長々と女性談義が始まる予感がしたレンブラントは、厳しい声でダミアンの言葉を遮った。
「そうじゃない。アレは、剣を使える。多分、相当な使い手から指導を受けている」
「嘘ぉ!?」
「嘘なものか。俺がこの目で見た。だから間違いない」
レンブラントはきっぱりと言いきったけれど、ダミアンは納得できない様子で顎に手を当てうーんと唸っている。
ダミアンが頷けないのも、無理はない。なぜならレンブラントだって、その目で見たというのに、未だに信じられないのだ。
だからレンブラントは、ダミアンに向け語りだした。ベルが剣を使えることを知った出来事を──
コメント
1件
いやあ、冒頭のダミアン、箱だけは絶対濡らさないっていうプロ根性がもうね……かっこよかったです。で、そのあとのレンブラントの不器用な優しさ——酒を注ぐとこ、じんわり来ました。雨の描写が効いてるから、あの「手っ取り早く暖を取れる酒」の一文がすごく沁みる。そして「ベルは剣を使える」って伏線、やっぱり来ましたか。狂犬呼ばわりも納得の裏側、気になります。