この作品はいかがでしたか?
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私は個人で絵のモデルをやっている。今日は公共施設の一室を借りて行われる絵画教室の仕事だ。この仕事もだいぶ慣れてきたなぁ。
「おはようございます」
と、そこに今回の主催者である女性が現れる。年齢は二十代後半くらいかな? 綺麗な人だけど……どこか陰がある感じがするんだよね。まあ芸術家ってそういうものなのかな。とりあえず挨拶をしてから、さっそく参加者たちが集う部屋のセッティングを行う。といっても、机を移動させるだけだから簡単だね。
それからしばらくして参加者たちも集まってきた。そして全員が揃ったところで、まずは軽い自己紹介の時間となる。
「皆さんこんにちは。私の名前は小鳥遊です。よろしくお願いします」
自己紹介が終った後で、先生がそうそう、といって付け加えた。
「隣りでは小学生向けの絵画教室が行われていますから、気をつけてくださいね」
えーっと、それはどういう意味なんだろう。小学生に私の裸を見せるなってこと? まあ、子ども達が間違って入ってきたら大変だよね。 うん、注意しておこう。
「はい、わかりました」
絵画教室自体は順調に終わった。別に、子ども達が乱入してくることもなかったし。私はバスタオル一枚を体に巻きつけると、服を着るために着替え室になっている隣の部屋に向かった。でも、そこで私は予想外の光景を目にすることになっちゃった。部屋には子ども達がいたのだ。小学生より小さいくらいの、男の子や女の子が。どうしたんだろうか。こんなところに来ちゃダメじゃないか。
「君たち、どうしてここにいるの?」
私が尋ねると、一人の男の人が答えてくれた。
「僕たち絵を描きに来たの」
あれ、子ども絵画教室はこの部屋じゃないような……。間違えたのかな? よくわからないけど、とにかく早く出て行ってもらわないと。
「あのね、ここは大人が絵を描くところなんだよ。だから君たちはあっちの部屋で絵を描いていてくれないかな?」
すると今度は女の子の方が口を開いた。
「なんでお姉さんは裸なの? 恥ずかしくないの?」
うっ、この質問なんて答えればいいだろ。そうだよねぇ、普通は恥ずかしいと思うんだけど。でも、私はお仕事でやってるだけだから。というわけで、正直に答えることにしよう。
「全然恥ずかしくなんかないよ。お仕事だもん」
「ふぅ~ん。何のお仕事?」
「モデルさんといって、みんなに絵を描いてもらうのが仕事なんだよ」
それを聞いて、子どもたちが興味深そうな表情を浮かべて言った。
「じゃあ今日は僕たち、お姉さんをモデルにして描くんだ!」
えぇ!? そんなこと言ってない! それに、裸のままだと困るよ。
「ちょっと待って。服を着てから描かないと」
「大丈夫だよ。お姉さんがさっき自分で、裸で描かれるのが仕事だっていったじゃん!」
いったけど……それとこれとは話が別だと思うんだよね。ああもう仕方がない。とりあえず子ども達を納得させるため、私は子どもたちモデルをすることにした。(続く)
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