テラーノベル
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暖色系に染まり始めた歩道を、圭は先導するように歩いていくと、遠くに大きな石造りの建築物が見えてきた。
「あの建物は……?」
「聖徳記念絵画館だな。美術館みたいな感じらしい」
建物の中央がドーム型になっているそれは、近付いてみると相当大きな建築物で、歴史を感じさせる重厚な佇まいに、美花が隣で、すごい……と感嘆の声を零している。
しばらく歩いていくと、国立競技場と神宮球場が現れ、さらに歩みを進めていくと、外苑の銀杏並木に突き当たる。
「うわぁ……すごく綺麗っ……」
綺麗な三角形に整えられ、延々と続いている、黄色く色付いた銀杏の木々。
並木の中央を通っている道路は歩行者天国で、多くの人が都心の秋の情景を楽しんでいる。
「ここの銀杏並木、映画やドラマのロケにも使われてたんだよな。歩いてみるか?」
「うんっ」
圭は、美花に問い掛けると、彼女がバッグの中から、スマートフォンと、ボイスレコーダーを取り出す。
彼は、再び彼女の手を繋ぎ、ゆっくりと並木道を歩き出した。
美花が、様々な角度からスマートフォンのカメラを向け、シャッター音を軽快に鳴らしている。
圭もスマートフォンを取り出し、黄色く彩られている風景を切り取っていた。
「おにーさんっ」
不意に美花に呼び止められ、圭は身体を向けると、シャッター音が小気味良く響いた。
「おいおい……いきなり何だよ……」
「スマホカメラで、紅葉の写真を撮っているおにーさんが絵になってたから、二〜三枚撮っちゃった」
美花が、圭の写真を画面に表示させ、彼の目の前に差し出す。
スマートフォンのカメラを高めに掲げて写真を撮っている圭、撮った画像を確認している圭、美花に呼ばれて撮られた圭の画像が、彼女のスマートフォンに収められていた。
「すごく自然体のイケメンって感じだよねぇ」
彼女が、いたずらっぽい笑みを浮かべながらスクロールさせると、嬉しそうに画面へ視線を落とす。
「に、しても。不意打ちはズルいな。俺にも、君の写真…………撮らせてもらわないとな?」
唇を僅かに歪めさせ、圭はニヤリと口角を吊り上げると、美花がバッグの中にスマートフォンとボイスレコーダーをしまい、両手でハートマークを作る。
「私の写真でいいの?」
「君の写真でいい、じゃなく…………君の写真がいいんだ」
圭のまっすぐな言葉に、美花が数秒ほど、きょとんとした表情を覗かせたが、戸惑いながらも丸い瞳が細められる。
(そう。俺の中にいる彼女は……この笑顔の彼女なんだよ……)
大輪の花を思わせる笑みを湛えながら、ポーズを取っている彼女に向けて、圭は想いを込めながら、静かにシャッターを切った。
コメント
1件
良いな自然の感じで😊
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