テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

未来の落とし物

一覧ページ

「未来の落とし物」のメインビジュアル

未来の落とし物

11 - 第10話:駅員の手紙

♥

48

2025年08月17日

シェアするシェアする
報告する

第10話:駅員の手紙




夜の笹波駅は、冷えた空気と蛍光灯の光に包まれていた。

改札横の窓口に立つのは、若い駅員・高瀬隼人(たかせ はやと)、25歳。短く刈り込んだ髪は濃い焦げ茶で、耳の横に少し癖がある。深緑のベストの下にきちんとアイロンの効いた白シャツ、胸元には銀色の名札が光っている。背は高く、細身の体は制服によく馴染んでいた。


閉発の時間が近づき、窓口に人影はない。机の上を片づけていると、書類棚の隅に古びた封筒が一つ置かれているのを見つけた。紙は少し黄ばみ、表には震えた文字で「高瀬隼人様」と書かれている。


不思議に思い封を開けると、中から一枚の便箋が出てきた。

——日付は2035年1月17日。まだ十年も先の未来。

そして、差出人は「高瀬隼人」。未来の自分からの手紙だった。


『おまえは、この駅でたくさんの“落し物”を見てきた。けれど、最後に拾うのは自分自身の未来だ』

『迷ったら、ホームの端に立って、水色の空を探せ。その空が見えるうちは、大丈夫だ』


読み進めるうちに、胸の奥が温かくなるような、不思議な感覚に包まれる。

——未来の自分は、この駅にまだ立っている。


高瀬は便箋をそっと封筒に戻し、制服の内ポケットにしまった。

窓口の外、夜空にはうっすらと水色を残した三日月が浮かんでいる。


「……じゃあ、明日もここで」


その小さなつぶやきは、ホームの静けさに溶け、駅の灯りと一緒に未来へと滲んでいった。



この作品はいかがでしたか?

48

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚