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「お父さん! ありがとうっ!」
俺はマイに守り人の件を話した。寂しいからお父さんになってと願ったマイが、この山に残される事になるのを承諾してくれるなどと思ってはいなかったのだが、話してみれば拍子抜けするほどにすんなりと、二つ返事で快諾してくれたのだ。
マイは山に残るという事をどれだけ考えて答えてくれたのかはわからない。だがせめて住むところは確保しなければならないだろう。俺は小屋を作ってやることにした。
「小さくて可愛いのがいいなー」
そしてスキルによって創られたのは、マイの服装に釣られて想像してしまった小ぢんまりとした庵だった。
「マイ、済まない。つい、この小屋を作ってしまったが……」
マイはそんな俺の言葉を聞く間も無く、引き戸を開けて中に入っていく。
一段あがったところに板張りの床に囲炉裏。その奥に畳の6畳ほどの部屋があるだけ。かまどもあるにはあるが、使えるか分からない。だが。
「うわぁー、なにこれなにこれ! かぁわいぃー!」
早速足袋を脱いで囲炉裏をつついて畳に転がりはしゃいでいる。
「ありがとう! ここならきっと寂しくないよ!」
本心で言っているようだ。だが寂しくないは違うのではないか?
「お父さんの想いが満ちているもの! 少し離れてしまってもマイは寂しくなんてないんだよ!」
そうか。これが気遣いなのか本心なのかはもういいとして、素直に受け止めよう。マイは俺の役に立ちたいと言った。ここで暮らすと言って役目を担うと言ってくれたんだ。今は感謝しよう。
「んふふ〜。これなにこれなに? いろり? あったかいな〜。お父さんみたい」
なるほど──この小屋は俺の魔術で作られてマイの魔力に反応している。それは図らずもいつもそこにあって娘に応える父親のようなのかも知れないな。
「ダリル様。そのスキルは本当に凄いですね」
「うん? 何の話だ?」
俺たちはマイを残して花園に戻ってきている。幼女に守り人の準備の整ったことを報告するために。
「ダリル様のもつ“慈愛”のスキルです。窮地にある者を救い上げる事で発動することの出来るそれです」
「何だそれは? 悪いが俺は自分の持つスキルやらステータスやらを知る術を持ってないんだ」
「そうでしたか……まあ常時待機状態のもののようですから、ご存知ないのかも知れませんね。そのスキルは“ダリル様が窮地から救った者がダリル様に対して感謝した時、それを非常に高い好感度に変換されて刷り込まれる”というものです」