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「暑いから休憩取りながら、雑草をとにかく抜きまくるよ〜」
3時間目。体を動かして日光を浴びる。そのために畑を耕す。日光を浴びるとビタミンDが出る。ビタミンDが生成される数が少ないと、うつ症状が出やすいことが実験でわかっているのだ。今まで部屋にいたから、体力作りにもなるだろう。
「畑で何作るの?」
藍琉ちゃんに聞かれた。あまり話しかけられたことがなかったら嬉しかった。
「そうだねぇ…お花か野菜か…」
そういえば決めていなかったことに気がつく。春から育てるならやはり野菜だろうか?それとも花だろうか?
「みんなは何がいい?」
「私野菜がいい!」
「花なら簡単そうでいいんじゃない?」
「思い切ってフルーツとか…」
グループワークやお昼休憩 通して、みんながこの場の雰囲気に慣れてきたようだった。全員ではないけれど、意見を言ってくれる人が多くなったなと思う。
「フルーツかぁ。ジャムでも作ろうか」
「ジャム!?めっちゃいい!」
畑は、フルーツを育てることに決定した。
「そろそろ休憩しよう。日陰に行って〜」
私の声掛けに、みんなが応える。でも、1人だけしゃがみこんでいる子がいた。
「伊吹ちゃん?大丈夫?」
「だい、じょうぶ…です、すみまっせん…ちょっと」
顔が真っ青だ。汗がたくさん出ているから脱水症状かもしれない。
「みんな〜。流石に暑すぎるから今日はもう終わろう!中に入ってて〜」
『はーい』
「伊吹ちゃん、おいで」
伊吹ちゃんの肩を支えながら、コンテナの方へ移動する。一人で涼しいところにいた方がゆっくり休めていいと思った。
「寝てていいよ。今エアコンつけるね」
「このピアノ…すごいですね」
「あの家を買った時に残されてたの。ほこりを被ってたり、調律がめちゃくちゃだったけど、綺麗にしたんだ」
そう言いながら、エアコンのスイッチを入れ、扇風機を付ける。
「寒くないかな。汗冷えない?」
「大丈夫です…」
扇風機の風が気持ちいのか、体を動かして楽な体制を取ろうとしている。
横になれるようなまともな家具がなくて申し訳なくなる。今度何かしら買ってこようと決心した。
「グループワーク、どうだった?」
「えと…楽しかったです」
「本当?よかった。初めてだから私ずっと緊張してたんだ」
「緊張してたの?」
意外、とでも言うように目を見開いた。
「実はこう見えても心配性だからね。私たちの仕事は経験値がものをいうから…新人の私が君たちを預かって、本当に大丈夫かなって心配してた」
初めて出す、私の本音。それを聞いてくれる伊吹ちゃんは、すっかり顔色が戻っていた。
「伊吹ちゃん、お昼休憩の時、個室にいたでしょう?もちろん一人で食べるのは良いの。でも、もしも何か抱えてたらどうしようって思ってたんだ。どうやって話しかけよう。そもそも助けを必要としているのかなって考えれば考えるほど心配がつのっていく。こんなカウンセラーじゃダメだよねぇ…ほんと」
私の自虐した言葉を聞いて、伊吹ちゃんは目線を落とした。少し困らせてしまったらしい。やっぱりカウンセラー失格だ。
「私、ご飯食べられなかった」
小さく、呟いた。
私は伊吹ちゃんを見て、目があって、優しく微笑んだ。全てを包み込めるように、受け止めるように。
「食べられない…食べたいのに、戻しちゃうの。それで、クラスの人にも虐められて…」
「うん。そうだったんだね。つらかったね」
涙を流しながら話してくれた。学校であったこと。心の中で不安や焦りがあったこと。そして、誰にも頼れなかったということ。
学校のカウンセラーにも話してくれなかった、伊吹ちゃんの本音。
「頑張った。よく頑張ったよ!えらいよ伊吹ちゃん。ありがとう、ここに来てくれて」
「私…ちゃんと食べれるようになりたいっ、ちゃんと、みんなと…」
過去から未来へ、進もうとしていた