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フリースクール初日。初めて生徒の本音を聞けた。そして、初めて私の本音を生徒に言った。言うつもりはなかったが、やはり本音を打ち明けると心がスッキリする。頭の霧が少しは晴れるのだ。
伊吹ちゃんに大きな変化が見られたことから、保護者の方へ報告をした。何に悩んでいたのか、何に苦しんでいたのか。言わなければ親は分からない。わかろうとしても限度がある。でも、子供はそれを言うことに大きな勇気がいる。だから私がいる。カウンセラーとはその中間を担うのだ。
「…初日で動きがあるとは思わなかったな」
生徒が帰宅し、部屋で報告書をまとめる。
もっとゆっくり事が進むと思っていた。しかし、こんなにも早く子供には変化が訪れる。そして、その早さに私は追いつけているのだろうか、と心配がつのる。もっと頑張らないといけない。私はカウンセラーなのだから。
報告書をまとめ終わると、夜ご飯を食べ、お風呂に入った。何となくスマホを開いてみると、メールに通知が入っていた。開いて見ると恭介からのもので、私はすぐに内容を確認した。
『今日からフリースクール開くんだよね。忙しいだろうけどがんばって。ハードワークはしないように!おやすみ』
昔から優しくしてくれた恭介の送るメールは、やはり優しい内容だった。しかし…
「痛いところ突くなぁ…」
何となくその日は、早く寝たい気分だった。
朝起きて、ご飯を食べる。顔を洗い、紙を整え、夜中に干しておいた洗濯物を片付ける。そして、フリースクールの玄関の鍵を開けた。そのまま外へ出て、2台のコンテナの鍵も開ける。昨日初めて使われたコンテナには堂々とピアノが立っていた。
登校時間になり、早速沙良ちゃんが元気よく走ってくる。沙良ちゃんはここから家が近いらしく、自分の足でやってくる。
「おはよう先生!」
「おはよう。今日も暑いねぇ」
沙良ちゃんは、ホントだよねぇと言いながら靴を脱ぐ。そして、次々と生徒がやってくる。こうして来てくれること自体、嬉しいことなのだ。
「おはようございます。しおり先生」
「あ、伊吹ちゃんとお母さん。おはようございます」
少しお母さんに隠れるようにして挨拶をする伊吹ちゃん。改めて会うと緊張するのだろう。
「先生、伊吹なんですけど、お昼ご飯の量を減らしたんです。本人が食べられそうな量にしてあげたんですけど…」
「はい、それで大丈夫です。本人の食べられそうという意識が大事ですから。お預かりさせていただきます」
よろしくお願いしますと言いながら去るお母さん。伊吹ちゃんはまだ心配そうな顔をしていた。
「よし、今日はみんなでクッキー作ろうと思うんだ。伊吹ちゃんはクッキー好き?」
そう聞くと、少し目線を右往左往させてからはっきりと私の目を見て言った。
「うん、好き!」
フリースクール2日目を通して、何となく交友関係ができてきた。
まず、藍琉ちゃんと茉子ちゃん。元々仲が良いこともあり、ずっと一緒にいる。しかし、この関係性に誰かしら加わらないと依存関係に陥ってしまう。
反対に、仲が悪いのが沙良ちゃんと武流くんだ。2人は幼なじみらしいが、口喧嘩をよくしていて、少し険悪な空気にさせてしまう。沙良ちゃんはここの中心的存在だから、空気を悪くすると周りまで悪くしてしまうので少し注意が必要。
他はコミュニケーションが取れるぐらいに仲が良くなっていた。グループワークや草抜きで距離が近くなり、話す機会も増えたのだろう。しかし、ずっと1人の子もいる。
「希空さん。勉強聞かなくて大丈夫?」
「今のところ困ってないので、大丈夫です」
そう言い、黙々とワークを進める希空さん。
周りと交友関係を築くのが苦手、と親御さんから聞いてはいたが、ここまでとは思わなかった。
数学が苦手で国語が得意なように、誰にでも得手不得手がある。無理やり交友関係を構築しろとは言わない。けれど、希空さんには悪い所がある。
「の、希空さん。ここがわからないんだけど…」
「他の人に聞いたら?」
これだ。
人と喋ることを拒否しているようだ。初対面の人にも家族にもこんな感じだから、希空さんの性格なのかもしれない。けれど、このままではきっと困ってしまう。でも、それをどう伝えればいいのだろう。
また1つ、大きく分厚い壁がそびえ立った
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