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薬を持ってロビンが所長室に帰ってくると、サイコロが検査器具を全身に装着された状態で寝かされていた。
所長がロビンにこう言う。
「先にNo.3156に投与しろ。君を信用していないわけではないが、万が一、その薬がレイにとって毒物であれば取り返しがつかない。」
「サイコロは実験台という訳ですか。」
「当たり前だ。どうした?その薬を使えばレイの体を治せるのだろう?ならばNo.3156に投与しても大丈夫なはずだが。」
ロビンの薬はまだレイには勿論のこと、サイコロにも投与したことがないものであった。しかし、この状況では、ロビンは所長の指示に従うしかないだろう。
ロビンはサイコロに近づき、薬が入った注射器を近づけてこう言った。
「サイコロ、ごめんな。きっと大丈夫だから!」
注射器の針がサイコロの右腕に入っていく。ロビンは所長にこう言った。
「この薬は効き目が速くでるので、サイコロの体を診ていればすぐに結果が分かります。」
「あぁ、そうでないと困るよ。」
所長はしばらくサイコロの体を診ていた。そしてこう言った。
「確かに血行と内臓の状態が良くなってきているな。いいだろう。この薬をレイに投与することにする。」
「ありがとうございます!」
喜ぶロビンに対し、所長は告げる。
「だがなロビンくん。君はNo.3156に思入れすぎているようだ。この際はっきりと言うが、研究動物の生死の決定権があるのは所長である私だ。だからNo.3156を保護しようなどという考えは捨てたまえ。ただの研究材料だと思いなさい。分かったね。」
「分かりました…」
本心ではないとはいえ、これ以上所長に刃向かう勇気はロビンにはなかった。
ロビンが俯いていると、所長室のドアからノックが聞こえた。
「ムーンです。お待たせしました。」
どうやらムーンが到着したようだ。所長がこう返す。
「すまないが手術は明日の昼に変更だ。後でデータを送るから準備しといてくれ。」
ムーンは「承知いたしました。」と返し去っていった。棒立ちしているロビンに所長がこう告げる。
「No.3156を部屋に連れて行け。No.3156との付き合い方も夜のうちにしっかり考えておく様に。」
ロビンは、「分かりました。失礼します。」と言い、まだ眠っているサイコロを抱えて所長室を出ていった。