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#貴種漂流譚
ダインの長い夜が終わりを告げたのとほぼ同時刻――。
街の質屋では、店主のプリッグがカウンターに腰を下ろし、手に入ったばかりの宝石をうっとりとした眼差しで見つめていた。
失くしたり盗まれたりしては大変と一度は宝箱に仕舞い込んだ。しかし、どうしても気になってしまい、この数日、寝食を忘れて手入れをし続けている。
宝石にうつるプリッグの脂ぎった顔ににやけた薄笑いが浮かぶ。
これを持ち込んだ、小汚いガキには、銅貨を三十枚ほど貸し付けてやった。もちろん、それはこの宝石の価値の百分の一もない。プリッグの見立てでは、小さな村ならば丸ごと買い取っても釣りが出るほど、高価な宝石だった。
ニヤニヤ笑いが止まらないのも無理はなかった。
しかし……、疑問は残る。こんなすごい宝石、あんな貧乏臭いチビがどうやって手に入れたんだ? 例え、悪魔に魂を売り渡しても不可能だろう……。
「まあ、いいか」
ハーッと熱い息を宝石に吹きかけ、プリッグはまたほくそ笑む。
「これから俺はこの街、いや、この国一番の金持ちだ……」
と、その時だった。
ドンドン、と店の戸口を乱暴に殴りつける音が聞こえた。
「何だよ!?」不機嫌に唸り、宝石を机の引き出しに仕舞い込みながら、プリッグは立ち上がった。「まだ、開店前だぞ!? こんな朝っぱらから――、一体、誰だよ?」
ブツブツとぼやきながら、プリッグはドアを開ける。
そこには漆黒の闇をまとった異形が佇んでいた。