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利用規約の行間
スクロールは、
指一本で進む。
小さな文字が、
途切れなく並ぶ。
椅子に腰を下ろし、
背中を机に預ける。
薄手のモカ色のカーディガンは前を留めず、
袖口が少し垂れている。
ズボンは柔らかく、
座ったままでも膝が楽だ。
髪は後ろでまとめたが、
数本だけ外れて首に触れている。
同意、の前で止まる。
読んだことはある。
毎回。
そう思っていた。
だが、
今日は違う。
行間に、
目が止まる。
保証しない。
責任を負わない。
変化は利用者に帰属する。
よくある言い回し。
何度も見た文。
その続きに、
ひとつだけ、
引っかかる前提がある。
効果は、
戻らない。
削除の項目はなく、
停止の項目もない。
当然のように、
書かれている。
言葉は、
一度変われば、
そのままだと。
気づかなかったのではない。
気づかないままで、
済ませていた。
画面を閉じる。
レキシリーダは机の上で、
静かに横たわっている。
触れなくても、
もう分かっている。
今まで付けた言葉は、
すべて、
ここに残る。
利用規約の行間に、
最初から書いてあったこと。
誰も話題にしない前提が、
今になって、
はっきり読めてしまった。
同意の位置は、
もう、
押されている。
#読み切り
紫道
立秋 芽々(りしゅう めめ)