私は魔術士になりたいっす!
そう言ったら身ぐるみ剥がされて、魔術士コスプレをさせられたっす。
「うむ。よく似合う……じゃないっすよー!」
スタッフをぺいっと放り出してローブもぺいっと、はやめておいたっす。恥ずかしさで涙が出て来たっす。
「まあ、ダリルにデリカシーなんて無いのは今さらだけど、見ず知らずの女の子にする事じゃないよねー」
チョロフが抱きしめてくれるっす。でも──。
「チョロフも楽しそうだったっす」
「まあ、確かにその灰色のローブはともかく服までは脱がさなくても良かったかもしれん。すまない」
そう言って素直に頭さげて謝られるとそれはそれで許すしかなくなってしまうっす。
「いいっすよ、私のためにしてくれたのなら……」
するとまたダリルさんは私の頭を撫でて
「インナーがあるより無い方がスッキリして似合うと思ったんだ。インナーのデコボコがあると不恰好になるからなこれは。思った通り可愛いぞ」
ダリルさんはいい笑顔でそんな事を言って誤魔化そうとしてるだけっす。たぶん。
「ダーリル! あなたはたまに無自覚に悩殺しようとするの辞めた方がいいよ? このフィナちゃんがいるんだから、ちょっとは自重しなさーいだああああああっ!」
私の頭を撫でる右手は天使なのに、チョロフの頭を掴む左手は悪魔っす。
「ビリーさんから聞きましたけど、ダリルさんは昔は無愛想で笑いもしなかったとか。だからですかね? ダリルさんの笑顔は素敵なんですよ──ってビリーさんが言ってました」
サツキさんはフォローなのかなんなのか分かんないっすけど、顔を赤らめて最後は小声だったっす。
「まあ、言ってしまうが当然着せ替え人形にしてお終いというわけじゃ無い。そのローブは無垢の妖精という名のローブでな、各種魔術との親和性を高めるものだ。赤の紋様はあまねく光を。青の紋様は生命の根源を。それらは無垢の地にて祝福される。そういった由緒正しいもので、俺からのレンタルだ。」
そう言われるとなんだか良いものに見えて来るっす。いや、気のせいじゃないっす。ほのかにローブの周りを取り巻く魔力が見えるっす。
「そしてスタッフは……ほら、持ってみろ。先端の輝石は無色透明の特注でな。それは妖精の園という名のスタッフで、同様に親和性を高め、かつどんな属性にも使えるものだ。もちろん俺からのレンタルだ、最後には返してもらうから粗末に扱うな」
一度は投げたスタッフを壊れてないかと調べたダリルさんは私に渡してそう言ったっす。