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夜の倉庫の奥。
冷たいコンクリートに膝をついた遥の身体は、震えと痛みでガタガタと揺れていた。
肩も腕も、首も腰も、痛みで悲鳴を上げている。
額には擦過傷があり、唇は切れかかっている。
息を整えようとしても、胸の奥に残る重い圧迫感と羞恥がそれを許さなかった。
「まだ動けるのかよ、無能」
颯馬の声が冷たく響く。隣で、彼の友人たちがくすくす笑いながら肩越しに覗き込む。
「見ろよ、こいつ、まだ震えてるぜ」
「これ、明日も同じこと繰り返されんのか? 可哀想ってレベルじゃねえな」
言葉の一つひとつが、遥の心を針で突くように痛い。
身体の痛みだけでなく、「存在そのものが価値のないもの」と言われ続ける感覚が、骨の奥まで押し寄せる。
手足を動かすたびに、痛みと羞恥が渦を巻き、心を締めつけた。
颯馬はゆっくりと歩み寄り、足で遥の背中を軽く押す。
膝をついたまま顔を上げることも許されず、遥はただ床にうつ伏せで震えるだけだった。
「お前なあ、なんでそんなにおとなしくしてんだ? もっと悔しがれよ」
颯馬の声に、友人の一人が声を重ねる。
「そうそう、痛いなら痛いって顔に出せ。そういうの見てる方が面白えんだよ」
遥は小さく呻いた。身体中の痛みと羞恥で声は震える。
言い訳も抗議も、もう出ない。
ただ、背後からの視線、冷たい笑い、鼻を突く汗と埃の匂い——それらが、全て自分を“支配された存在”として確認させる道具だった。
「なあ、ゴミ、今日の俺らの遊び、楽しんでんのか?」
颯馬が皮肉に笑う。友人たちも声を揃えて嘲笑する。
「全然楽しそうじゃねえだろ、震えてんじゃん」
「でもそれがいいんだよな。見てるだけで最高に面白え」
遥の膝がガクガクと震える。
顔を上げることも許されず、視界の端にちらつく友人たちの笑顔が、まるで自分の存在を踏みつけるかのようだった。
羞恥と痛みで涙が滲むが、それもまた“見せ物”になるだけ。
「もう少し、全身で震えろ。痛みも恐怖も、全部出せ」
颯馬が一歩近づく。
遥は必死に床に顔を押し付け、痛みに耐える。
床を押さえ、手のひらで身体を支えながら、全ての動きが“彼らの遊び道具”に変わる。
「ほら、もっとぐちゃぐちゃにしろよ。こいつ、玩具として完璧だろ」
友人たちの声が一斉に重なり、遥の存在を笑いに変えていく。
身体も心も、全てが踏みにじられる感覚。
自分の痛みと羞恥を誰かが楽しんでいる、という現実が、遥の胸を抉った。
「今日の収穫、悪くねえな」
颯馬が笑う。
友人たちも小さく頷き、顔をほころばせる。
遥は膝をついたまま、肩で息をし、全身が震える。
もう身体を動かすことも、声を出すことも、心を守ることもできない。
ただ、彼らの目の前で、存在そのものが踏みにじられる。
その夜、倉庫に残された遥は、痛みと羞恥と恐怖で全身を震わせた。
颯馬とその友人たちが立ち去った後も、誰も来ない。
冷たい床に押し付けられた顔には、涙と汗と埃が混ざり、身体も心も“消耗された玩具”のようだった。
存在そのものを踏みにじられ、痛みを楽しむ者たちに囲まれ、遥はただ静かに床を見つめ続けるしかなかった。