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第二十話「献体のアペリティフ」
🔪静かなるテーブル
古びたダイニング。
蝋燭の光が揺れるその中央に、“食卓”が設けられていた。
銀の皿に横たわるのは、若い男の死体。
両目は閉じられ、口元は安らかな微笑に整えられていた。
装飾品のようにスーツを着せられ、白薔薇が胸に挿されている。
レオノーラは深紅のドレスのまま、
その亡骸の前にナイフとフォークを添えて座る。
「最初の一口は、舌じゃなくて、“想い”から始めるの。」
彼女の隣には、“誰もいない”はずの椅子が引かれていた。
🔪スケアリーの実況「前菜の屍肉サラダ」
「しょしょしょしょしょしょぉおぉッ!!!」
スケアリーは皿の上で踊っていた。
赤いスーツの袖に死臭を巻き取りながら、スプーンを舐める。
「これだよこれ!!!
“食べない前菜”っていう最高に矛盾した料理!!!!」
「見て、皿に盛られた死体!!
でも、ナイフは動かない!!
フォークも使わない!!!」
「これはつまり、“亡骸を視覚で飲む儀式料理”なんだよォ!!!」
🔪ユリウス、席に座る
「……これ、君が殺したのか?」
ユリウスが、反対側の席に腰を下ろす。
テーブルクロスには、誰かの手形が染みていた。
レオノーラは首を傾げる。
「ええ、“静かにしてくれる人”を探していたの。
この人はね、もう何も言わない。とっても素敵。」
🔪レオノーラの献立
彼女は白いナプキンを広げ、目を閉じて言う。
「最初にいただくのは、“沈黙”の味。
お次は、“遺された未練”の香り。」
彼女の指が、死者の口元に添えられた花弁を千切る。
「そして最後は、“私の心臓”で味付けして、完成なの。」
🔪スケアリーの食レポ「遺言風ドレッシング」
「ギャッハァアアアアアア!!」
スケアリーが椅子の背に乗って絶叫する。
「感情を添えるな! 添えすぎるな! 添えろよッ!!!!」
「遺言ドレッシング!?
腐った心と発酵した愛が合わさって、
“未練のヴィネグレット”になってるんだよッ!!!」
「ねえユリウス、これどう思う!?
“泣きながら食う料理”って……もう、“味覚じゃない”よね!?」
🔪ユリウスの声、届くか
「君は……この人のこと、本当に好きだったのか?」
その問いに、レオノーラはそっと笑う。
そして――死体の耳元に、そっと口を寄せて囁いた。
「聞いた? あなたのことを、疑ってる。」
一瞬、死体の指が微かに動いたように見えた。
ユリウスの背に冷たいものが走る。
🔪スケアリーの囁き
「ユリウス……見えてる?
これが“死を愛した者の食卓”だよ。」
「彼女は、“死体の前でしか心が開けない”料理人なんだ……」
「でも、怖いのはね……
それが“とても美しい”ってことだよ。」
次回 → 第二十一話「骨と記憶のコンフィ」