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二人で話し合った結果、産婦人科には明後日行く事になった。

今日は結婚式があるので病院には行けない。そして明日は日曜日なので病院は休みだ。


明後日までに陸が評判の良い産婦人科を探すと言った。そして病院には陸もついて来てくれる事になった。

その後二人は式を挙げるレストランへ向かった。


隣にいる陸は神経質なくらい過保護になっていた。家を出る際華子がハイヒールを履こうとすると、


「駄目だ! もっと踵の低い靴にしろ!」


と命令をする。

そして式場へ向かう車の中では華子が冷えすぎないようにとエアコンを細かく調節する。

さらには車が揺れないようにとスピードを落として車を走らせた。


「陸、そんなにゆっくりだと遅刻しちゃうわよ」

「いや、遅刻したって構わない。子供の命の方が大事なんだからな」


陸はそう言って更に慎重に車を進める。

思わず華子は噴き出した。今までこんな陸は見た事がなかったからだ。

いつも沈着冷静でどんな事が起きても動揺しない陸が、おかしな事になっているのでつい華子は笑いがこみ上げて来る。

それと同時に華子は自分が愛されているのを実感した。


「陸、私に家族を与えてくれてありがとう」


陸は華子がお礼を言ったので驚いたようだったがすぐに優しい笑みを浮かべて言った。


「ああ…二人でしっかり育てていこう」

「うん」


華子は笑顔で頷くと心に誓った。


(私は母のようには決してならない…私は愛する我が子を守り抜くわ)


その瞬間、華子は心の中できっぱりと母の弘子と決別した。



式には多くの人が参列してくれた。


カフェのスタッフ達はもちろんの事、バータイムの本間や店長の塩村、そして陸の事務所のスタッフ、それに高津夫妻も参列してくれた。


もちろん華子の友人の美羽と沙織も来てくれた。沙織は少し早めに来て華子のヘアメイクに取り掛かる。

華子はこの日髪をアップにはせずにあえて下ろすスタイルを希望した。

華子の希望通り沙織は髪に緩くウェーブをかけてくれてとてもエレガントなスタイルに仕上げてくれた。


鉄板焼の店を経営している陸の後輩の杉田は陸の自衛官時代の同僚を何名か引き連れて式に参列した。

陸は久しぶりに会った同僚達と楽しそうに話している。

その一角はとても目立っていた。背が高く体格の良い現役自衛官たちはとても人目を引く存在だ。礼儀正しい態度や爽やかな笑顔が人々の目を惹きつけている。


彼らを見た美羽と沙織は慌てて華子がいる花嫁控室へ来ると、


「ちょっとちょっと、私達自衛官に乗り換えてもいい?」


と口を揃えて言ったので華子は思わず吹き出してしまった。


一方、銀座で小料理屋をやっている相良はバータイムの料理人の本間や70代のカフェスタッフ睦子と意気投合していた。

本間が以前勤めていたホテルのレストランに相良も睦子も何度か食事に行った事があるらしい。

三人はホテルの話や店の話題で盛り上がっていた。


その様子を見ながら華子は思った。

この結婚式が人と人を繋ぐ場になっている……と。そう思うとさらに幸せが増してくるような気がした。


そしていよいよ式の準備が整った。


華子が控室に一人でいると、ハワイから駆け付けた陸の母と妹の夏子、そして夏子の夫の賢太郎が挨拶に来た。


「まぁー華子さんとっても綺麗よ!」

「本当…….すごく素敵! お兄ちゃんもこんなにきれいなお嫁さんを貰って幸せね!」

「本当だな」


三人は口々に言った。久しぶりに三人に再会した華子は、


「今日は遠い所からありがとうございます。これから末永くよろしくお願いいたします」


と挨拶をした。


「こちらこそよろしくお願いしますね。陸の事を頼みますよ」

「はい」

「華子さん、お兄ちゃんが何かやらかしたらすぐ私達に言ってね」

「そうそう、僕達からきつーくお仕置きしますから」


それを聞いた華子は思わずクスッと笑う。


そこへ今度は華子の祖父の宗太郎と祖母の菊子、それに北海道から駆け付けた父の慶太が三人でやって来た。


「お父さん、おばあちゃん達と一緒に来たの?」

「私が呼んだのよ。昨晩はうちに泊まってもらったの」


祖母がそう言うと宗太郎も続ける。


「久しぶりに慶太君に会えて嬉しかったよ」


祖父はニコニコしている。


「お二人から、前日はうち泊まりなさいと言っていただいたので、そうさせてもらったよ」


父の慶太は嬉しそうに微笑んだ。

そして華子の花嫁姿を見つめると目に涙を浮かべながら言った。


「華子、結婚おめでとう! 陸君なら大丈夫だ。二人で幸せになるんだよ」

「お父さん…ありがとう」


そこで華子が感極まって泣き出したので、夏子が慌ててティッシュで涙を拭ってくれた。

そこからは両家の和気あいあいとした挨拶が始まった。



そしていよいよ結婚式が始まった。

式は人前式で行なわれる。


二人は誓いの言葉を述べた後、あの日ハワイで購入した指輪を互いの指にはめる。

その後誓いのキスをした二人に向かって参列者からは拍手と共に指笛や冷やかしの声が湧き上がった。


新郎新婦がケーキを互いに食べさせる場面では皆がカメラを持って前に進み出た。

普段なかなか見る事が出来ない陸の照れた顔をなんとか収めようと陸の後輩達が必死にカメラを構える。

華子の頬にクリームがつき陸が咄嗟にそれをキスで拭いとる場面ではまるで芸能人の記者会見のようなフラッシュがたかれた。


その後参列者有志による余興が始まった。

中でも圧巻だったのは現役自衛官による自衛隊コントだ。

プロのお笑い顔負けのコントは会場の人達の大きな笑いを誘った。


結婚式は始まりから終わりまで常にアットホームであたたかい雰囲気に包まれていた。



華子の母・弘子は結局日本には戻って来なかった。招待状は送ったがそれに返事が来る事はなかった。

しかし華子は悲しくはなかった。

なぜなら華子には陸という新しい家族が出来たからだ。そしてお腹の中には小さな命も宿っている。


やがて三人家族になる。


華子は欲しかった家族を自分の力で手に入れた。そして自分の居場所を自分の力で作ったのだ。

家族というものは本当に望めば簡単に手に入るものなのかもしれない。


その時華子は隣にいる陸を見た。

華子の視線に気づいた陸が華子の視線を捉える。


「ん? 体調は大丈夫か?」

「うん、大丈夫よ」

「じゃあ、なぜこっちを見ているんだ?」

「陸の事が大好きだからよ」


華子はそう言うと唇を陸に近づけていった。それに気づいた陸は人目も気にせずに唇を重ねる。


その瞬間ヒューヒューという冷やかしの声が響きレストラン内には盛大な拍手が沸き起こった。


<了>

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